Lilacの妊娠・出産・育児ノート

キャリア志向の強い女性や、仕事で既に責任ある立場にあったりする女性向けの妊娠・出産・育児ブログ。 妊娠したときのTips集、キャリアと妊娠・育児を取り巻く論点、女性リーダーシップと子育ての両立、日本と海外の状況比較、今は仕事に没頭中だけどいずれは子供も欲しいと思う若い女性向けのメッセージなど、様々な話題をお届けします

書評

書評:モモちゃんとアカネちゃん-父の不在と娘の成長

最近、娘に読み聞かせる絵本を探していて、自分が小さい頃に読んだ絵本や児童書に出会うことが多い。
先日は、私が小学校に上がる頃に図書館で何度も借りてむさぼるように読んだ、モモちゃんシリーズを発見。
当時4巻までしかなかったシリーズも、いつの間にか続編が出ており、6冊に増えていた。 
今年の2月に、著者の松谷みよ子が亡くなっていたことも、今頃知った。
いずれ娘も読む名作だから・・・と思い、Amazonで6冊ともハードカバーで購入。

モモちゃんとアカネちゃんシリーズは、松谷みよ子の実話を元にした話である。

松谷みよ子の元夫の瀬川拓男氏は、彼女が若いころ身を捧げた人形劇の世界で、劇団を創設した団長であり、また、松谷を民話研究の世界に誘った師でもある。
モモちゃんが産まれた家は、劇団員の宿泊所や練習所、製作所を兼ねた場所で、良く言えば賑やかな、悪く言えば、騒々しくて赤ちゃんをゆっくり育てるような環境ではなかった、と松谷は振り返る。
劇団員たちは、その家の中をまるで小鳥のように自由に飛び回り、時には赤ちゃんのベッドや赤ちゃんの頭の上まで歩きまわる。
それだけでなく、師であり団長でもある夫と、小鳥たちとの間には、様々な愛憎劇が繰り広げられたのだった。

夫はその小鳥たちの一羽と不倫関係となり、松谷自身も愛憎劇の中で苦しみ、持病の結核も悪化して、心身をおかしくしてしまう。
そんな中でモモちゃんを育てながら、二人目のアカネちゃんを妊娠、出産した松谷はとうとう離婚を決意する。
自分と二人の娘を守るために。

シリーズ3作目の「モモちゃんとアカネちゃん」は、ママの体が病におかされ、パパとの離婚を経験した時期を描いたものだ。
物心ついてから、パパが家にいたことがなかったアカネちゃんこと松谷の次女は、なぜ自分にはパパがいないのか、ママとパパはなぜお別れしたのかをずっと不思議に思っていた。
2作目を読んだ当時5歳の次女が、つぎはそこんとこを書いて欲しい、と松谷にお願いしたのが、当時ではめずらしい、離婚を幼年童話で書いたきっかけだったという。




ママである松谷が心身を蝕まれていく様子は、「死に神」として描かれる。

死に神はママのことがひどく気に入ったようで、なかなか離れない。
眠っているママの胸の上にいることもあり、ママは息をするのも苦しいが、身動きもできず、声も出ない。
このままでは死んでしまう。そうしたら子どもたちが困るから、なんとかしなくちゃ・・・

そして、ママは森へでかけ、転んだり、倒れたりしながら歩き続け、「森のおばあさん」の家にたどり着く。
森のおばあさんは、ママが何も言う前から、あんたが来た理由はわかるよ、死に神にとりつかれているんだろう、という。
そして、一つの植木鉢に植えられた二本の枯れた木を指さし、これがママとパパであるという。
ママは「そだつ木」、パパは「あるく木」だという。
おばあさんは、うえ木ばちをもって外へ出ました。そして二本の木をひきぬくと、よく根っこを洗いました。それから森の土をほって、二本の木を別々にうえました。
するとママの木は、みるみる、たれていたはっぱをしゃんとさせ、生きかえり、すくすくとのびはじめました。
ところがパパの木はちがいました。やはりかれかかったはっぱは、しゃんとしましたが、あるきはじめたのです。
「そうさ、おまえさんのごていしゅは、あるく木なんだよ。そこをしっかりみなくちゃいけない。」
そうして、あるく木は、金色に光る宿り木を肩に載せて、どんどん歩いて行ってしまった。
(宿り木は不倫関係にあった女性と考えられるが、作中では明確にされていない)

あるく木は、歩かないではいられない。そだつ木と一緒に我慢して植木鉢に収まっていることは出来ないのだ。
そして、そだつ木は、あるく木に乗っかって人生をすごす「宿り木」にはなり切れない。
だから、二人共枯れないで、生きるためには、もう根分けして、絡まりあった根をほぐして、別々になるしかない。

そうして、パパとさようならをしたママと、モモちゃんとアカネちゃんとネコのプーは新しい家に引っ越していく。
新しい家のそばには、やさしいくまさんが住んでいて、シチューを作ってくれたり、アカネちゃんがグズった時にはいつでも預かってあげるわ、と言ってくれる。
そうやって、モモちゃんもアカネちゃんもたくさんの人に見守られながら、すくすくと育っていく・・・。


病気のことも、パパとの離婚のことも、当時実際に生きている人々を傷つけること無く、ファンタジーの中で描かれ、子供の心にもすぅっと入ってくるのは、松谷みよ子の卓越した想像力と表現力によるものだろう。

その後、別れたパパも、何度も物語の中に登場する。
姿形はオオカミだったりするが、心のなかは娘への愛情で溢れている。
そして、ママとは反りが合わなかったけれど、娘達にとっては素晴らしい父親として描かれる。
男らしくて、力強く、冒険を求めてどんどん新しい場所へ歩いて行ってしまうような人だ。

娘の成長には、父親に愛される経験が大切、という話がある。
父親が不在であっても、父が娘を愛していること、素晴らしい人であったことを、母親が伝え続けることは、娘たちの成長にとってとても大切だったに違いない。
松谷自身、夫に対して複雑な感情を持っていたに違いないが、だからこそ、このように児童文学の形をとることで、自分のドロドロした感情を交えずに、父親のことを娘に語り続けることが出来たのだろう。

念のため書いておくと、父親の愛情がなくても、娘はちゃんと育つ。
私自身がそうだからだ。

父親の代わりに、自分が父親らしくなって、家族を守ればいいんだ、と思ってすくすく育ってきた。
私を情緒豊かに育ててくれたのは、母親と、モモちゃんシリーズを始めとするたくさんの本だった。
恋愛には苦労したし、結婚も遅くなったけれど、自分が男らしく頼りがいのある存在でいることが、私自身のコンプレックスを解消するのに必要だったので、仕方がなかったんだろう、と考えている。

けれど、娘には余計な苦労はさせたくないので、優しいパパには積極的に育児に参加してもらい、娘をたくさん愛してほしいと思っている。
そして、世の中を生き抜く知恵として、沢山の本を読んで欲しいし、モモちゃんシリーズも是非読んで欲しい。

【モモちゃんとアカネちゃんシリーズ】

モモちゃんとアカネちゃんの本(1)ちいさいモモちゃん (児童文学創作シリーズ)
松谷 みよ子
講談社
1974-06-27

モモちゃんが赤ちゃんの時から3歳になるまでを描いたお話。モモちゃんの大好きな黒猫のプー、にんじんさん、はつかねずみのチュッチュなど、沢山のキャラクターが登場。「パンツのうた」をはじめとする、ちいさいこどもが大好きなリズミカルな歌や言い回しも沢山挿入されていて、 読み聞かせをするのも楽しそうだ。











 
 

書評:Tracy Hogg 赤ちゃん語がわかる魔法の育児書

「魔の3週目」という言葉がある。
生後3週目ころから、赤ちゃんがギャンギャンと大声で泣き始めるようになり、また夜中も寝ないで泣き始める、夕方に突然泣き始めるなど、制御不能になる現象をママたちがそう呼んでいる。
産後の体調も回復し、夜間の頻回授乳も減り、漸く睡眠時間が取れるか、と期待していたママたちにとって絶望的になる瞬間だ。

今振り返ると、生後3,4週目ころからは、赤ちゃんに大声で泣くだけの肺活量や、夜中も寝ないで泣くだけの体力がつき始めるから、ああなるのであろう。
一説には、赤ちゃん自身が、心地よかった子宮から、厳しい外界に出てきてしまったことに気づくのがこの頃で、何故自分はこんなところにいるのかと我に返って泣く、という話もある。

ウチの娘にも「魔の3週目」があった。
理由がわからず、とにかくギャンギャンと大声で泣きまくるので、私はひとりでオロオロ途方にくれていた。
おっぱいでもないし、おむつでもない。お腹が痛いのだろうか。一体何なんだ?
何をしても泣き止まない、そして寝ない赤ちゃんを抱っこしてばかりで、何もできずに一日が終わってしまうことも多かった。

そんな頃に読んで救われたのが、このトレーシー・ホッグの育児書だった。
1990年代に発売されて、アメリカではベストセラーになった本だ。
シアーズ博士のベビーブックに並び、アメリカでは育児書の双璧とも言える。


トレーシー・ホッグは、看護師の資格を持ち、ベビーシッター養成や育児相談などを行うプロのベビーシッターであり、この本はその経験を通じて、何千もの赤ちゃんとその親との組み合わせを見てきて書かれた本だ。
他の育児書との違いは、赤ちゃん視点でありながら、「とにかく親がラクになるための方法」を書いていることだ。

親がラクになるために一番大切なのが、「赤ちゃんが何を言いたいのかを理解すること」。
赤ちゃんの仕草や泣き方をよく観察して、本当にしてほしいことを理解し、してあげれば、赤ちゃんも喜ぶし、親も楽になる。
それをしながら、授乳→遊ぶ→寝る→親が自分の時間を取るというリズムを作ってあげることで、赤ちゃんの体調も整って、腹痛などが減ってくるし、親もいつ自分の時間が取れるのか予測できる生活が出来るようになる。

赤ちゃんを育てた経験のない人は、もしくは育てていても、この本でいうところの「エンジェルタイプ」や「育児書タイプ」の赤ちゃんだった人は、そんなことの何が大変なのか、わからないかもしれない。
でも、多くの親は赤ちゃんの声を聞き分けるのが難しいと感じたことがあると思う。
実際、泣いている赤ちゃんを目の前にして、冷静に観察して、理由分析をするなんて難しいのである。

この本が優れているのは、泣き声を聞くと、とっさに行動に出てしまう親は、何故赤ちゃんの泣いている様子を黙って観察する事ができないのかを、親の心理状態にまで入り込んで問題解決をしていることだ。

例えば、赤ちゃんの泣き声を聞くと、おっぱいを赤ちゃんの口に突っ込んで泣き止ませてしまう母親がいる。
彼女は、自分の母親に「泣くのはあなたの育て方が悪いんじゃないの?」と言われたことが原因で、「とにかく泣くのはダメなんだ」と、落ち着いて赤ちゃんの泣く様子を観察することが出来なかったのだという。

赤ちゃんに自分の思いを重ねてしまう親も多いという。
イヴォンヌの赤ちゃんは寝付くときによくぐずります。
「まあ、かわいそうなアダム。一人ぼっちで寂しかったの?怖かったの?」
実は寂しいのはアダムではなく、イヴォンヌの方なのです。彼女の夫はたびに出ることが多いのですが、彼女は一人ぼっちが昔から苦手です。だからほんとうは「かわいそうなアダム」ではなく、「かわいそうなわたし」なのです。

難産だったなど、自分の満足するお産が出来なかった母親は、自信が持てず、赤ちゃんの声をうまく聞き分けることが出来ない事があるという。
でも、難産で悲しいのは自分であって、赤ちゃんはなんとも思っていない。

母親や父親自身に精神的に不安定な要素があると、その気持ちを赤ちゃんに置き換えてしまうことが多く、冷静に子育てできないため、著者はまずは親自身が自分の精神状態を理解し、「それは自分の問題であって、赤ちゃんの問題ではない」と自覚することを説いている。

そして、赤ちゃんが育てにくいのは、親の育て方が悪いのではなく、赤ちゃん自身の性格に由来することが多いこと。他人の赤ちゃんと比較して、育て方に自信をなくすのではなく、赤ちゃんがどのような性格で、何を求めているかをよく観察し、コミュニケーションを取ることが一番大切なことを説く。

こうやって赤ちゃんは、親とは別個の人格で、別個の感情を持つ人間なんだ、ということを自覚すると、この子は何を求めているのか、と冷静に観察して、欲しい物を与えることができるし、子育ても徐々にラクになる。
早い段階から、このように親が子供を別の人格だと自覚し、自分の感情を移入しすぎない子育てが出来るのは、親にとっても、赤ちゃんにとっても良いことではないだろうか。

赤ちゃんが泣くのは、お腹が空いたり、オムツが気持ち悪いだけでなく、「眠い」とか「疲れた」とか、「ゲップが出なくて痛い」、「暑い」、「寒い」、「興奮しすぎた」など、色んな理由があるが、これを頭や顔、舌や手足の動かし方などを含めた「泣き方」で原因を見分ける方法を教えてくれているのも、この本の良い所。
赤ちゃんが泣くたびに、P150~153の見分け方の表を読んで、理由を判定し、ボロボロになる頃には、私も赤ちゃんの泣く理由が7割くらいはわかるようになって、以前よりずっと楽になってきた。

おっぱいは伝家の宝刀、赤ちゃんは泣き止むことが多いのだが、余り使いすぎると親は赤ちゃんに振り回されて何もできなくなるし、そうやってちょこちょこ飲みばかりが続くと、赤ちゃんは栄養が多い後乳を飲めないばかりか、乳糖がたまって腹痛を起こすので何もいいことがない。
泣く理由がわかると、泣くたびにおっぱいを突っ込む必要もなくなり、腹痛などで泣くことも無くなって、徐々にリズムが整ってくる。
おっぱいをあげるのは、他の原因が考えられない本当に最後の手段としか使わなくなるので、授乳間隔があき、一回で量を飲ませられるようになるので、いわゆる「完母」がやりやすくなる。

こうして、わたしも赤ちゃんをあやしながら家事をしたり、ブログを更新したり、ということが普通にできるようになってきた。
(もちろん、出来ない日もある)

そうなるまでには、三歩進んで二歩下がりながら、一ヶ月くらいはかかるのであるが、3冊くらいの育児書を買って、親の生活をとにかくラクにする、という意味で一番役に立ったのはこの本だなぁと思っている。

[私が他に買った育児書]
新編 シアーズ博士夫妻のベビーブック
ウイリアム・シアーズ
主婦の友社
2008-12-18
 
親と離れてベビーベッドで赤ちゃんを寝かせて自立心を育てる育児が当たり前のアメリカで、母乳育児や、添い寝や添い乳、スリングで一日中一緒にいるなどの「アタッチメント育児」を推奨し、ベストセラーになった本。トレーシー・ホッグと両方読むと、バランスが取れるようになると思う。こちらもまたどこかで書評します。


0~4歳 わが子の発達に合わせた1日30分間「語りかけ」育児
サリー ウォード
小学館
2001-06-26

一日30分、赤ちゃんに語りかけ、双方向のコミュニケーションをすることで、子供の精神的な発達を促す本。
この本を読んで、私は赤ちゃんが「ほー」といえば「ほー」と返し、買い物に行っても「これはトマトだよ~」などと赤ちゃんに語りかける変な人になってしまったが、赤ちゃんとコミュニケーションがとれている自信は持てた。これもどこかで書評します 


書評:産後が始まった!夫による、産後のリアル妻レポート

空前のイクメンブームで、世の中には男性向けの育児書が溢れているが、「夫に産後の妻のキモチを分かってもらうために読んでもらう本」として、断然オススメなのがこの本。

産後が始まった! 夫による、産後のリアル妻レポート
渡辺大地
KADOKAWA/メディアファクトリー
2014-03-14


この本は育児書ではなくて、産後に夫婦でどんな壁にぶち当たるのか、ということをわかりやすく解説している、いわゆる産後クライシスを回避するための本である。

産後クライシスといえば、何と30%の夫婦が産後2年以内に離婚しているという統計(厚生労働省)、5割の妻が産後に夫を嫌いになっているという統計(ベネッセ)もあり、ウチは愛し合っているから関係ないね、と思っている夫婦でも「産後クライシス」はひとごとではない。
そこまで行かずとも、産後の大変さを夫に理解してもらえないと感じたり、家事や育児を思ったように効率よく手伝ってもらえないときに、夫に不満をぶつける前に、この本を読んでもらう方が、夫婦仲良く楽しく産後ライフを送ることが出来るだろう。

この本は、産後、妻はどれだけ体力的・精神的に参っているものなのか、家事を手伝っているのに「何もしない」と妻に怒られるのは何故なのか、産後の夫婦間のよくある誤解やすれ違いを、かわいいタッチのマンガ入りで解説しており、パッと手にとってさっと読む事ができる。
この本の作者(男性)自身が経験したことを、そのままマンガにしているのだが、マンガだけに、普通だったらお互いに言えないようなことも言い合っていて、こちらの気持ちを代弁してくれるので、読んでいて気持ちが良い。例えばこんな感じ・・・
2人目の妊娠を聞いた時、
夫「やったあぁ、家族で野球チームの夢に近づいたぞ!」

夫のテンションに対して浮かない妻の顔。
妻「2人目か…産後相当大変だよね…」
夫「何で?一人目そんなに大変じゃなかったじゃん。大丈夫だよ!
  自分で言うのも何だけど、オレ「イクメン」な方だと思うけど?
  一人目の時だってさ、頑張っていっぱい残業して、帰ったら必ずコミュニケーション取って…」
妻「なぁにがイクメン?
  遅く帰ってきてせっかく寝た子を起こすわ。寝かしつけるまで「ごはんまだ?」とかボケッと待ってるわ。
  毎晩毎晩「りょうくん可愛かった?」ってこっちは悪露や抜け毛や色んな悩みで心も体もぼろぼろだったのに、気付いてなかったんかー!!」

ただ子供をかわいがって「イクメン」を自認していた私は、妻の気持ちを知ってガクゼンとしました
妻「二人目でまた同じことの繰り返しだったら、もうオシマイだからね!」 

夫は一生懸命家事を手伝っているつもりなのに、何故「何もしてくれない」と言われるのか、など、夫がギモンに思うところも、ちゃんと妻の気持ちを代弁して書いてくれている。
例えばゴミ捨て。
この本によると、夫が一番手伝っていると思っている家事の1位は「ゴミ捨て」だが、妻が手伝って欲しいと思っている家事の1位も「ゴミ捨て」だという。
その理由は、ゴミ捨ての際、夫がやるのは、妻が家中から集めてまとめたゴミを、玄関からゴミ捨て場に移動するだけだから、ということ。一番大変なのは、家中のゴミ箱やその辺に落ちてるゴミを集めてまとめるところなので、そこからやって欲しい、と妻は思っているのだ。

全くその通り、と私も共感。
台所の生ごみの臭いのを我慢しながらビニール袋を閉め、リビングのゴミ箱はまだ半分しか埋まってないからこっちとまとめよなどと考えながら集め、洗面所のゴミ袋を集め、寝室のゴミ袋を集め、ついでにベッド周りに落ちているティッシュのゴミを拾い、大きなゴミ袋に束ねて・・・
それからAmazonの段ボール箱を全部潰して運びやすくまとめて、ペットボトルは袋に入れて、夫がゴミ捨て場に運びやすいように玄関に整列。
ここまでが大変なので、この作業も全部やってくれたらラクなのに、とは内心思っていた。
こういうことは言えば良いのかもしれないですが、せっかくゴミ移動をやってくれているので、気分よくやってほしいと思うから、わざわざ言わない。
だからこそ、この本をそっと置いておいて、読んでもらうだけで、こちらの気持ちを代弁してもらえるのはありがたい。

それから、夫の方も完璧イクメンなどではなく、ダメっぷりがちゃんと書かれているところもこの本の良い所。
夜中のオムツ替え担当なのに、余りの眠さに負けて、 気づかないフリをしてスルーしようとする夫。 
家事を手伝いに来てくれた妻の母親に感謝の言葉も伝えず、「えー明日来れないんですか?」などと言って母親を怒らせ、サポートを打ち切られる夫。
夫が読んでいて、自分が責められるばかりの本はあまり嬉しくないですが、「こんな気持になるのってオレだけじゃないのね」と共感できるところが多いのは読みやすいだろう。

結局のところ、夫婦が自分の思っていることを相手にうまく伝え、相手の気持ちを理解して、お互いに「ありがとう」と「ごめんね」を言い合うことが出来れば、産後クライシスなんて起こりえないと思うが、この「うまく伝える」というのが難しい。 
この本を二人で読むことで、言いづらいこと、表現しにくいことも相手に伝わる、という意味でコミュニケーションの道具としてオススメである。

書評:LEAN IN-女性、仕事、リーダーへの意欲

LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲
シェリル・サンドバーグ
日本経済新聞出版社
2013-06-26


本書が発売されてから、既に1年半が経っており、今更書評する本ではない、と思うかも知れない。でも、女性のリーダーシップを語る上でこの本は避けて通れないし、また今まで時間や機会がなくて読んでいない方もいらっしゃるだろう。そして、私自身今回読み返して、ライフステージで学びが変わる良書だと思ったので、敢えて書評を書くことにした。
まだ読んでいないという方は、是非この機会に読んで欲しいが、一度読んでいる方も、また読み返して欲しい本である。この本は、女性のライフスタイルの様々なステージにおけるアドバイスが書かれている。だから、前に読んだ時と違う人生のステージにあれば、異なる部分がアドバイスとして耳に入ってくるだろう。

私の場合、前回読んだ時は、昇進したばかりで意気揚々としていたからか、キャリアパスの描き方や、女性が成功するためのメンターシップの築き方の章が心に刺さった。今回は、リーダーとして様々な苦労を経験したり、結婚・妊娠を経たためか、リーダーのコミュニケーションの話や、妊娠を前にしてリーダーシップをとれなくなる女性へのメッセージ、家庭でのパートナーシップの築き方が心に響いた。1年半という月日は、特に20代、30代の若い女性にとっては、人生のステージが変わるのに十分な長さだ。だからこそ、今一度読んで欲しい、と思う。

残念な日本の女性リーダーシップ率。でも歩く人が多くなれば、それが道になるはず。

さて、この本を序章から読んで、日本人として引っかかるのは、先進国の中でも女性リーダーが少ない国として、常に日本が挙げられていることだろう。議会に占める女性議員の比率、実業界で女性の取締役の比率、給与の男女差、アメリカでも、全てにおいて女性のほうが少ないのだが、「一方日本では、」という形で、先進国の中でも特に低い日本の数字がわざわざ示されており、これが世界中の人々に読まれているのかと思うと恥ずかしくなる。例えばこんな感じだ。

アメリカでは上級執行役員の14%、取締役の17%が女性だが、この数字は過去10年間ほとんど変わっていない。(中略)ヨーロッパの場合には、女性の取締役は全体の14%である。一方日本では、経営執行委員会の女性の割合はわずか1.1%に過ぎず、大企業の会長をつとめている女性は一人もいない。これは、女性の経営参加率としては先進国の中で最低の数字である。

問題は、取締役などの女性比率が日本より圧倒的に高いアメリカにおいても、シェリル・サンドバーグがこの本を書いて啓蒙するほどに、未だに女性リーダーには苦労が多いということだ。はるかに遅れている日本では、女性たちがアメリカみたいに働くようになるには、ましてや女性リーダー比率を更に引き上げる目標に向けては、もっとたくさんの苦労が必要になるのだろう、と思うと気が滅入りそうになるが、魯迅がかつて書いたように「もともと地上に道はない。歩く人が多くなれば、それが道になる」のである。

日本では、1985年の男女雇用機会均等法世代の女性達が、男も女も同等に働けるんだということを身を持って示してくれた。数は少ないが、女性取締役になったり、部長などで活躍している女性たちが、道を切り開いてくれた。
また、1998年以降に就職し、育休制度が整い始める中で子供を産んだ世代の女性達が、出産や育児と両立しながらも、仕事を続けられることを示してくれた。
そして、その後に就職した女性たちは、私も含め、出産・育児と仕事を両立するだけでなく、シェリルのように出産・育児とリーダーになることを当然のように両立するようになってほしい。それが、更に次の世代が歩く道を作ることになるからだ。

妊娠・育児を始める前から、両立を不安に思う必要はない。むしろ子供を産む前に、新しいことを始めるべき

先週、「イクメン礼賛」だけでは解決しない、キャリアと育児を両立する女性活用問題 という記事の中で書いたが、私自身、まだ結婚も決めていない女性若手社員や、就職活動中の女子学生から、「キャリアを考えるといつ産むべきか」「どうやって両立すればよいのか」など、キャリアと出産・育児の両立についての不安や、質問を受けることが度々ある。

女性が、実際に妊娠するはるか前から、育児との両立を不安に思い、キャリア選択を躊躇するのは日本だけではなく、アメリカでも同じであることが、この本にも書かれている。シェリル・サンドバーグはそんな話の象徴として、ある本に書かれている5歳の女の子の話を紹介している。

その子には大好きな男の子がいるのだが、ある日動転した様子で家に帰ってくると、「あの子もあたしも宇宙飛行士になりたいの。困っちゃう」と言う。ママは意味がわからず、一体何が問題なの、と尋ねた。「だって私達がふたりとも宇宙に行っちゃったら、誰がベビーの面倒を見るの?」
なんと5歳にして、宇宙飛行の最大の障害は子育てなのだ。

私自身、妊娠しようと思って活動していた時、そして妊娠がわかった時、自分でリーダーシップを取って、新しいことを始めることを躊躇した。自分が何かを始めても、体調を崩したり産休に入って中途半端になるかもしれないし、とか、責任をとれなくなるかもしれない、と不安に思い、新しいことを始められないでいたのだ。
その後、「リーダーシップと妊婦であることを両立する5つの方法」という記事で書いたように、そんな状況であってもリーダーシップを取って何かを始めるためのコツをつかみ、出来るようになった。
しかし、もっと前から悩まずに、当たり前のように出来ていれば良かったのに、と今でも思う。

シェリル・サンドバーグも言う。 「子育てのために仕事を辞めようか考えるのは、子供が生まれた時。その前ではない。ましてや何年も前ではない」。むしろ、子供を持つ前こそ、新しい仕事を始めるべきだと後輩たちに勧めているのである。こんなエピソードがある。

内定通知を出すと、彼女はいくつか確認したいことがあるからとオフィスにやってきた。(中略)ミーティングが終わって彼女が立ち上がった時、私は一歩踏み込んでみることにした。「もしかするとあなたは近々子供を産みたいと計画していて、内定を辞退しようと考えているのではないかしら。」(中略)彼女は戻ってきてまた座った。「是非お話させて下さい」。そこで私は言った。直感には反するかも知れないが、子供を持つ直前というのは、実は新しい仕事を始めるのにまたとない良い時期なのだ、と。新しい仕事が面白くて得るものが多いと分かれば、出産後にわくわくして職場復帰できるだろう。もし、転職を考えるような今の仕事にとどまるか、あるいは仕事からすっかり離れた状態で出産したら、もう犠牲を払ってまでやる価値が有るようには思えなくなるかもしれない。彼女はフェイスブックに入ることを決めた。働き始めた時には妊娠しており、8ヶ月後に無事出産。4ヶ月の産休を取ると、大好きな仕事に戻ってきた。

全くそのとおりだ。
私は両立することの不安を克服し、リーダーシップを取って新しいことを始めた結果、今は早く産休・育休から戻って、自分が始めた新しい仕事を再開することにワクワクしている。そして、産休に入った今でも同僚やクライアントに呼ばれ、会議に出席したり、電話やメールで問い合わせが来たり、頼りにされているのがわかる。産休・育休が明けて、帰ってくる場所が自分にはあるのだ、と思う。自分がいなくても仕事が進むよう、引き継ぎをきちんとするのは大切だが、新しいことを始めることを躊躇する必要は全くないと、今は思っている。


シェリル・サンドバーグのこの本を読んで思うことは山のようにあるが、そろそろ切り上げよう。この本は、そのような形で、読み手の人生のステージや直面している課題になって、どの部分が響くか、ということが変わってくる。そのくらい、たくさんの課題について、データや、彼女自身の経験と思ったことが詰め込まれており、何度読んでも読み飽きることのない名著だ。むしろ、読み飽きてしまうくらいの時には、 女性のリーダーシップに関する様々な問題が解決している、望むべき時代なのかもしれない。 

書評:「女神的」リーダーシップ

女神的リーダーシップ 世界を変えるのは、女性と「女性のように考える」男性である
ジョン・ガーズマ、マイケル・ダントニオ
プレジデント社
2013-11-28


世界で成功しているリーダーたちが持っている資質には、「表現力が豊か」「共感力がある」「利他的である」など一般的に「女性的」と言われる資質が多い、という。作者は2008年のリーマン・ショック以降、人々の消費のあり方や、ビジネスのあり方が大きく変わったことを描いた前作の「スペンド・シフト」を書くための取材の中で、消費やビジネスだけではなく、リーダーシップのあり方も大きく変わってきているのではないか、という事に気づき、この本を上梓したという。

ビジネス書の類を期待している人には、若干の違和感があるだろう。この本は、「メインメッセージがあり、それを裏付ける証拠が1,2,3と並んで・・・」というロジカルシンキングに書かれているタイプの本ではないからだ。「リーダーに必要な資質は女性的な要素が多い」という主張は、最後まで明快に裏付けされることなく進んでいく。

しかしながら、イギリス、イスラエル、日本、コロンビア、中国と南北東西あらゆる国を筆者といっしょに旅をする中で、出てくるリーダーのひとりひとりは、確かに20世紀型の強くマッチョなリーダー像ではない。柔軟で、共感力があり、コミュニケーション力に長けていて、素直で愛されるキャラクターであることが浮き彫りになっている。それを「女性的」と呼ぶかはともかくとして、現在世界を変えているリーダーシップが過去と異なって来ていることは明らかだ。

何よりこの本を読んでいて楽しいのは、出てくるリーダーひとりひとりの描写が素晴らしく、物語として息を呑みながら、時には共感し、涙を流しながら読むことが出来ることだ。10カ国以上の国で作者が取材して出会ったリーダーや起業家ひとりひとりが、現在情熱をかけて推し進めていることだけでなく、彼らのバックグラウンド、何故それを推し進めることになったのか、過去の経緯やしてきた苦労も細やかに書かれている。リーダー達のキャラクターが動き出してくる、そんな本だ。そして読み終わった時には、本当に筆者とリーダーシップを求めて世界中を旅してきたような気持ちになる。

なお、もし、あなたが「リーダーに必要な資質は女性的な要素が多い」ということをロジカルに裏付けたい、と考えているなら、この本を読むだけでなく、コンサルティングファームのマッキンゼー・アンド・カンパニーで出されている「Women Matter」という報告書を読むことをお勧めする。この報告書では、リーダーに必要な資質を9つの要素に分け、世界のビジネスリーダーへの調査に基づいて、「女性リーダーに多く見られる資質」「男性リーダーに多くみられる資質」「両方に見られる資質」に分類した上で、現在各国で必要とされるリーダーの資質には、確かに「女性リーダーに多く見られる資質」が多い、ということをロジカルに検証している。

McKinsey&Company "Women Matter 2"

いずれにせよ、これからの世界を変える、現在求められているリーダーシップ像を知る上で、これらの本は非常に参考になるのではないだろうか。

参考文献:

McKinsey&Company "Women Matter 2"

スペンド・シフト ― <希望>をもたらす消費 ―
ジョン・ガーズマ
プレジデント社
2011-07-20

 

書評:「育休世代」のジレンマ 女性活用は何故失敗するのか?



「へえ、あいつも女の幸せに目覚めたの」
「超バリバリ働いてたのがあっさり辞めちゃってさ、もったいないよね」
社会人6年目で出産した私自身が、友人が、そして今回のインタビュー対象者を紹介してもらう上で、何度も聞いた台詞だ。いや、思えば社会に出て以来、聞かされ続けて来たことだ。
「女は結婚すると皆、あーなっちゃうんだよな」「お前はああいう風になるなよ」 

こんな序文から始まる本書は、そんな風にバリバリ働いていたキャリア志向の女性たちが、妊娠・出産をきっかけに仕事を辞めてしまう経緯、そしてそれを起こしている構造的な問題を、15人の女性たちのインタビューを通じて明らかにしたものだ。

本書のインタビューによれば、実は、男性と遜色なくバリバリ働きたいという思考を持つマッチョ志向の女性ほど、出産をきっかけに仕事を辞めている。中には専業主婦になっていく人もいる。一方で、就職活動の時から「自分は育児もしたい」と、社会の中の女性的役割を受け入れている女性のほうが、結果としてキャリアを継続している。著者が序文で問題提起しているように、「バリキャリ女性ほど、突然女の幸せに目覚めたかのように辞めていく」ということが、実際に起こっているのである。女性の意識と一見逆転しているように見えるかのようなことが、何故起こるのだろうか。

読み進めるほどに、 マッチョ志向の女性は、学生時代から「私は男と同等に、ハンディ無しでバリバリ働きたい」と考え、男性比率の高い伝統的な職場に飛び込む傾向が高いことが浮き彫りにされていく。そして、働きながらも「女性だから」という理由でサポートを得ることを潔しとしない。
そんな職場にいながら、たまたま20代で結婚し、妊娠、出産をしてしまったら、その後の職場からの育児と両立するためのサポートが得られなくなってしまうのだ。または妊娠した女性の待遇が分からない周囲からは、腫れ物に触るように過剰に扱われ、一般職の女性と同じ職務に追い込まれる。本人は元々求めていたやりがいを得られず、「何のために子供との時間を犠牲にして、仕事しているんだろう」と悩み、裏切られたような、半ば諦めの気持ちで離職していくのだ。
一方で、女性的役割を受け入れる女性のほうが、バリバリ働くやりがいよりも、育児と仕事を両立できるような職場環境を重視して職場を選んでおり、結果として周囲の理解やサポートを得られ、キャリアを継続できているのである。

結局のところ、女性自身の意識や努力よりも、職場における女性への待遇やサポートの方が、女性のキャリア継続に重要であること、そしてそういった職場を最初から選ぶか否かが、女性のキャリア形成に大きく影響しているのである。

15人という少人数の調査だが、それぞれの女性に納得の行くストーリーがある。
辞めていくバリキャリ女性が、決して「女性としての幸せに目覚めたから辞めていく」のではないこと。そして育児をしたい思考も強く、職場もそれで選んだ女性が、周囲のサポートを得て、キャリアとの両立を真剣に考えるように変わっていく様子が描かれており、それをつなげてストーリーとして読むのも面白い。

本書に登場する15人は、育児休暇等の制度が整い始めた2000年代に就職、その後20代で結婚、20代のうちに第一子を出産している。世の中には、私のようにある程度のキャリアを積み、30代半ばを過ぎてから出産するケースも多くあり、彼女たちは違う課題が問題となるので、女性のキャリアと育児の両立がこの本で全て解決できるというものではない。しかしながら、こういった20代結婚・出産をすることが普通に出来るような環境にならないと、少子化問題は解決しないので、その意味でも本書は十分に大きな問題提起をしていると思う。
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