Lilacの妊娠・出産・育児ノート

キャリア志向の強い女性や、仕事で既に責任ある立場にあったりする女性向けの妊娠・出産・育児ブログ。 妊娠したときのTips集、キャリアと妊娠・育児を取り巻く論点、女性リーダーシップと子育ての両立、日本と海外の状況比較、今は仕事に没頭中だけどいずれは子供も欲しいと思う若い女性向けのメッセージなど、様々な話題をお届けします

女性とリーダーシップ

女性のキャリア構築で重要となる「メンター」にまつわる10個の誤解

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最近、女性が昇進するためのメンターやスポンサーの重要性があちこちで語られている。
このブログでも女性のリーダーシップを論じる以上、一度は書かないといけない、と思っていた話題がこれだ。
私自身、現段階でメンターやスポンサーとなる人を探し、関係構築をしているところであり、偉そうに語るほどに分かっているわけではない。ただし、私の少ない現在の経験から思うことも多いので、勇気を振り絞って(笑)まとめてみる。

そもそも、メンターとかスポンサーって何?という方もいるだろう。
メンターとは言葉通り、仕事上での指導者や助言者という意味だ。キャリアを構築するために、もっと生々しく言えば組織で生き残り、階段を登っていくために必要不可欠なアドバイスをくれたり、指導をしてくれる人をメンターと言う。女性も、男性も、キャリア構築にはメンターの存在は非常に重要だ。

一方、スポンサーとはメンターより狭義で使われる言葉で、昇進したり、立場を築くのに投資してくれる人、リスクを取ってくれる人である。例えば、他の幹部にその人を推薦して、昇進しやすくしたり、新しい仕事のチャンスを与えたりするためにリスクを取ってくれる人が「スポンサー」と呼ばれる。

なお、ここで「リスク」と言っているのは、例えば「こいつはよく出来るぞ」と他の幹部に自分の部下を推薦したのに、その部下が成果を出せなければ、部下の能力の目利き力に疑問符がついてしまうので、他の幹部に人を紹介するのもリスクはある、というような世知辛いことを言っている。

メンターだと「アドバイスするだけの人」という意味にもなり、その人に仕事を与えるためや昇進するためにリスクを取るとは限らないから、最近は「メンターだけではダメ、スポンサーがいないと出世できない」などと言われて、スポンサーという言葉が区別して使われる、という文脈である。

1. メンターとスポンサーは違うもの?-No その区別を付ける必要はない。幅広い層のメンターを持つことが重要

というわけで、メンターとスポンサーは定義としては違うが、それを敢えて区別する必要はないと考えている。というか、同じ直線上にある、程度の問題であり、区別することは難しい。メンターと言うものの実態を考えると、「メンターだけでなく、スポンサーがいないとダメ」という言説は、非常に浅く聞こえるのである。

そもそもメンターがメンティーのために時間を割いてアドバイスをくれることだって、投資である。それ以上の投資をするのは嫌だと思っているメンターはいない。信頼関係が深くなるにつれ、自然と投資額が増えていく、というだけのことなのだ。
または、自分のメンティーのために何かをしよう(投資しよう)、と思っているが、メンター自身が若かったり、社内での立場がまだ低く、できる事に限界があることもある。その限界の中で、自分の上司にメンティーを「彼女は有能なんです」と推薦してチャンスをあげたり、評価を高めようとするのが、若いメンターの自然な行動だ。

重要なのは、スポンサーを持つことではなく、幅広い層のメンターを持つこと、そしてそのメンターとの信頼関係を徐々に深めていくことである。自分のメンターポートフォリオの中に、直接昇進させるなどの実力があり、スポンサーとして振る舞える人がいるのが理想、というだけである。
逆にスポンサー的な偉い人だけが評価し、直属の先輩や上司がメンターになってくれない人は、恐らく何か問題がある。

というわけで、この文章では、メンターとスポンサーは分けて使わず、スポンサーの意味を含む形でメンターという言葉を使う。

2. メンターを持とうとするのはいやらしいこと?-No 出世のためでなく、楽しく賢く生きるために必要なこと

自分が出世するために「メンター」を持つなんて、日本人の美徳からするといやらしい、と思う人もいるかもしれない。これに対しては、メンターが自分の出世のため、などと考える必要はない、と言いたい。

メンターとは、自分を評価し、相談に乗ってくれて、新しいチャンスをくれたり、アドバイスをくれる人だ。会社の中で、自分がやりたいことをやるために、他の部署に掛けあってくれたり、顧客など社外の人を紹介してくれたりと、時間やネットワークを投資してくれる人もメンターだ。また、仕事を進める上で困っている時(例えば仕事と育児の両立など)に、時間を割いて相談に乗ってくれたり、アドバイスをくれたり、問題解決をしてくれる人もメンターだ。

そういう形で、自分のために時間やネットワークその他を投資してくれる人がたくさんいれば、仕事も成功させやすいし、自分も楽しい。「出世のためのメンター」がいやらしいと思う人は、自分が仕事を成功させ、楽しむためにはメンターたちの協力が必要不可欠であり、結果として出世も伴う、と思う方が自然だろう。

3. 私にはメンターはいない-No. 組織で生きてきた以上、メンターは絶対にいる。「この人は私のメンターだ」と意識することが信頼構築の第一歩

最近、「女性のキャリア構築にはメンターが不可欠」と喧伝されるせいか、「私にはメンターがいない、それで苦労しているのだ」などと思い込んで焦っている女性が増えているように思う。しかし、新入社員ならともかく、それなりの期間働いてきているのであれば、絶対にメンターやスポンサーがいるはずだ。常に自分を抜擢するほどの信頼関係がまだ築けていないとしても、少しは自分に投資をしてきてくれているはずである。過去に小口でも自分に投資してくれた人に対し、「この人が私のメンターなんだ」と意識をすることが、メンターたちとの信頼関係を深め、もっと多くの投資を引き出すための第一歩である。

今週3回目の引用になるが、LEAN INの中でシェリル・サンドバーグはこんな経験を紹介している。
グーグルにいた頃、非常に優秀な若い女性に数年にわたって注目し、彼女が重大な決定をする局面で折にふれてアドバイスをした。「メンター」という言葉は使わなかったが、彼女の成長のためにたくさんの時間を費やしたつもりだった。だからある日彼女が、「私にはメンターはいなかったし、私を見守ってくれる人は誰もいなかった」とひどくあからさまに言った時、私はびっくりしてしまった 

メンティーだと思って投資している人に「私にはメンターはいない」と言われる程、メンターにとって悲しいことはない。それでメンター・メンティーの関係が終わってしまうわけではないが、これ以上関係が深まることはないってことかな、と思ってしまうだろう。それは、非常にもったいないことである。

メンターがいないということは絶対にない。過去の仕事・プロジェクトや評価、昇進などを思い出してみよう。その仕事の上で、自分のために時間を割いてくれたり、自分のために他の人に働きかけてくれたり、評価をしてくれた人は本当にいなかっただろうか?評価や昇進の際、自分のことを評価してくれたのは誰だろうか?その人たちが、あなたのメンター・ポートフォリオの基礎になる人達だ。まずは彼らがメンターなのだと認識しよう。そう認識すれば、自然と色々と相談に乗ってもらったり、一緒に仕事をしようと思うようになり、信頼関係が深まっていくだろう。「この人がメンターなんだ」と意識することが、全ての第一歩になるのだ。

4. メンターは社内の人?-No 社外にもメンターがいるし、むしろ重要

メンターは社内の人とは限らない。例えば自分のクライアントや顧客は、メンターであることも多い。例えば、顧客がある会社を取引先として選ぶ場合、営業の人が気に入ったりして、「この子は信頼できる。投資してやろう」「彼女がいるから、この会社を使おう」という気持ちで選ぶ場合も多くある。この場合の顧客は明らかにメンター(スポンサー)だと言って良い。

そして3で書いたように、メンターだと意識することで、その人との信頼関係も深くなる。例えば、世間話で家族の話をしたり、一緒に食事に行って、仕事以外のことを相談したりすることもあるだろう。仕事だけでなく、人間として、信頼関係を勝ち取ることで、その人との関係はより盤石なものとなり、結果としてメンターはより多くの投資をしたいと自然と思うようになるだろう。

更に言うと、メンターは仕事関係の人とも限らない。仕事以外の個人的なところにも、メンターは存在しうる。例えば、自分の親友で、自分のために何かを投資してくれる人はメンターと言って良い。趣味の世界で出会った人にもメンターはいるかもしれない。
メンターポートフォリオは、社内に偏ることなく、外部も含めて、幅広く持っているのが良い。単に組織の中で昇進するだけでなく、何か新しいことを始める際などにも、幅広いサポートを得ることができるからである。

5. メンターは自分の上司など上役の人?-No 同じくらいの立場の同僚にもメンターがいる

同様の理由で、メンターは上司とは限らない。同じくらいの立場の同僚も、メンターとして自分に投資してくれる人がいる。例えば、その同僚が、自分の上司に、あなたのことを推薦してくれたり、アドバイスをくれるかもしれない。ここでも「この人は私のメンターだ」と認識する謙虚さが、関係構築の第一歩となる。

6. メンターには「なって下さい」とお願いするものではない-Yes, but 自分から働きかけて関係構築は可能

LEAN INの中でシェリル・サンドバーグは、見知らぬ人に「メンターになって下さい」と言われて面食らう、と書いていた。メンターになって欲しい人に「なって下さい」というのは不自然だ、というのは全くその通りで、徐々に関係構築すべきものである。ただし、メンターになって欲しい人に自分から働きかけることは可能である。

例えば私の場合、社内で一緒に働いたことはないが、尊敬しているシニア・パートナーがいて、彼には定期的に時間を割いて頂いて、自分のキャリア構築に関する相談に乗ってもらっている。私のことを理解してもらうと同時に、彼のアドバイスを実行し、その成果を報告することで徐々に信頼関係を深め、今では何かあれば、私にチャンスをくれようとしたり、社内の他の人に働きかけたりしてくれたりと、彼が私に投資をしてくれる関係になっている。私は彼のことをメンターだと思っているし、恐らく彼は私をメンティーだと思ってくれている。何か機会があれば、一緒に仕事をするなどして、恩返しをしたいと思っている。

MITで私の指導教官であり、メンターでもあった教授も、私が頻繁に質問に行き、先生と議論をしていたことがきっかけで、メンターになって頂けたと思っている。

このように、メンターになって欲しい人には、「なって下さい」と言うのはおかしいが、質問に行ったり、相談に乗ってもらったり、問題解決をしてもらうなどで、その人を頼りにすることをきっかけに、関係を築きはじめる事が可能である。

7. メンターは待っていれば庇護を向けてくれる?-No 一緒に働いていなくても成長の状況くらい報告すべき

メンターは親鳥のように自分を育ててくれる人だと思い、庇護を待っている人がいる。残念ながら、女性にこういう人が多い。上にも書いたように、メンターは自分から働きかけて作っていくことが可能であるし、また関係を維持したり、深めるためには、自分から定期的に働きかけることが重要だ。

メンターになる立場の人達は忙しい。あなたがどんなに優秀で、素晴らしいと思わせる人だったとしても、一緒に働いていない期間が長すぎると、関係は薄れてしまうだろう。過去に一緒に働いて、評価をしてくれたなど、小口でも自分に投資をしてくれた人には、まめにメールを書いたり、連絡を取るなどして、関係を維持することは非常に重要だ。連絡の内容は、自分の近況報告でよい。メンターにとっては、メンティーが成長しているということが何よりも嬉しい報告なので、どのように成長しているかを連絡をするだけで良いのである。

8. メンターは頼ることで探すべき?-No まずは自分から与えることで、メンターになってくれる人もいる

メンターには働きかけるとしても、相談に行ったり、頼りにしないとダメだと思っている人がいる。必ずしもそうではない。相手が自分より立場がはるかに上であれば、頼りにするのが自然だが、自分と同じくらいの立場や、自分からも与えられる相手であれば、与えるところからメンターシップが始まることがある。

例えば、私の会社に、私とは全く異なる強みを持っている同僚がいる。私よりも人生経験も長い。私は、彼の強みの部分で色々とアドバイスを貰い、また一緒に仕事をしてスキルを学びたいと思っている。一方、私の方が彼よりもずっと勤続年数も長く、またある特定の分野では私に圧倒的な知識がある。
そんな彼にメンターになってもらうために私がやったのは、月一回時間を取り、彼の困っていることを聞き、私が役に立てるところでアドバイスをしたり、後方支援をする、ということだ。彼は、この時間をとても有意義に思ってくれ、お返しとして私にも色々なアドバイスをくれる存在になった。また、私が産休に入った今も色々とサポートをくれている。

9. メンターは常に与えてくれる人?-No メンターとは持ちつ・持たれつの関係であることを自覚する

これも女性に多いが、メンターは自分に与える人だと思っており、恩返しをしようという発想がない人がいる。一方、男性同士のメンターシップを観察すると、メンターがメンティーに時に無理なことをお願いしても、メンティーが「Yes, Sir!」という感じで言うことを聞き、それにより信頼関係が深まっているケースも多々ある。余りに無理なことをお願いする人をメンターとして持つ必要はないが、メンターのために何か恩返しをする、という意識を持つことは重要である。

例えば、普段相談に乗ってもらうなどでお世話になっているメンターとは、一緒に仕事をすることで貢献したり、メンターが困っている時には手伝うことで、恩返しをすることにより、メンターはメンティーのためにもっと支援しようと思うようになるのだ。こういう関係を「アプレンティスシップ(師弟関係)」と呼び、男性の方がスポンサーを得て、昇進しやすいなどと言われるのは、この師弟関係を自然に築けているケースが多いからではないかと思う。

女性のメンティーの場合、男性のように「Yes, Sir!」という感じにはならないと思うが、メンターのために貢献したい、という気持ちを持ち続け、機会があれば実行することを心がければ、より多くの支援を自然に得られるようになるだろう。

10. 自分がメンティーを持つのは早い?-No. メンティーを持つことは、メンターとの関係構築に重要である

最後のアドバイスは、自分自身がメンターとなって相手に投資をするという経験を、キャリアの早いうちに持ったほうが良い、ということである。そうすることで、メンターがメンティーに何を求めているか、どうすることで信頼関係を深めていくことが出来るか、自然とわかるようになる。メンターである自分が、メンティーにやってほしいことこそ、自分もメンターにやるべきことなのだ。

上記に書いたコツは、ほぼ全て、私自身が後輩のメンターになることで、よく出来たメンティーの行動に学び、また時には悪気のないメンティーの不可解な行動に戸惑い、「こういう失礼なこと、自分も過去にメンターに対してやってきたかも・・・良くないな」など他山の石としながら、身につけてきたことだ。こんなまとめ記事を読むよりも、自分がメンターになって色んな思いをするほうが、ずっと学びは大きいかもしれない。

以上、だいぶ長くなってしまったが、女性がキャリアを構築するにむけ、メンターを得るために重要と思うこと-そして世間によく誤解されていると思うこと10個を書いてみた。正しくメンターシップを構築し、キャリア構築に役立てて頂ければ、と思う。

参考文献
LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲
シェリル・サンドバーグ
日本経済新聞出版社
2013-06-26

 

 

書評:LEAN IN-女性、仕事、リーダーへの意欲

LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲
シェリル・サンドバーグ
日本経済新聞出版社
2013-06-26


本書が発売されてから、既に1年半が経っており、今更書評する本ではない、と思うかも知れない。でも、女性のリーダーシップを語る上でこの本は避けて通れないし、また今まで時間や機会がなくて読んでいない方もいらっしゃるだろう。そして、私自身今回読み返して、ライフステージで学びが変わる良書だと思ったので、敢えて書評を書くことにした。
まだ読んでいないという方は、是非この機会に読んで欲しいが、一度読んでいる方も、また読み返して欲しい本である。この本は、女性のライフスタイルの様々なステージにおけるアドバイスが書かれている。だから、前に読んだ時と違う人生のステージにあれば、異なる部分がアドバイスとして耳に入ってくるだろう。

私の場合、前回読んだ時は、昇進したばかりで意気揚々としていたからか、キャリアパスの描き方や、女性が成功するためのメンターシップの築き方の章が心に刺さった。今回は、リーダーとして様々な苦労を経験したり、結婚・妊娠を経たためか、リーダーのコミュニケーションの話や、妊娠を前にしてリーダーシップをとれなくなる女性へのメッセージ、家庭でのパートナーシップの築き方が心に響いた。1年半という月日は、特に20代、30代の若い女性にとっては、人生のステージが変わるのに十分な長さだ。だからこそ、今一度読んで欲しい、と思う。

残念な日本の女性リーダーシップ率。でも歩く人が多くなれば、それが道になるはず。

さて、この本を序章から読んで、日本人として引っかかるのは、先進国の中でも女性リーダーが少ない国として、常に日本が挙げられていることだろう。議会に占める女性議員の比率、実業界で女性の取締役の比率、給与の男女差、アメリカでも、全てにおいて女性のほうが少ないのだが、「一方日本では、」という形で、先進国の中でも特に低い日本の数字がわざわざ示されており、これが世界中の人々に読まれているのかと思うと恥ずかしくなる。例えばこんな感じだ。

アメリカでは上級執行役員の14%、取締役の17%が女性だが、この数字は過去10年間ほとんど変わっていない。(中略)ヨーロッパの場合には、女性の取締役は全体の14%である。一方日本では、経営執行委員会の女性の割合はわずか1.1%に過ぎず、大企業の会長をつとめている女性は一人もいない。これは、女性の経営参加率としては先進国の中で最低の数字である。

問題は、取締役などの女性比率が日本より圧倒的に高いアメリカにおいても、シェリル・サンドバーグがこの本を書いて啓蒙するほどに、未だに女性リーダーには苦労が多いということだ。はるかに遅れている日本では、女性たちがアメリカみたいに働くようになるには、ましてや女性リーダー比率を更に引き上げる目標に向けては、もっとたくさんの苦労が必要になるのだろう、と思うと気が滅入りそうになるが、魯迅がかつて書いたように「もともと地上に道はない。歩く人が多くなれば、それが道になる」のである。

日本では、1985年の男女雇用機会均等法世代の女性達が、男も女も同等に働けるんだということを身を持って示してくれた。数は少ないが、女性取締役になったり、部長などで活躍している女性たちが、道を切り開いてくれた。
また、1998年以降に就職し、育休制度が整い始める中で子供を産んだ世代の女性達が、出産や育児と両立しながらも、仕事を続けられることを示してくれた。
そして、その後に就職した女性たちは、私も含め、出産・育児と仕事を両立するだけでなく、シェリルのように出産・育児とリーダーになることを当然のように両立するようになってほしい。それが、更に次の世代が歩く道を作ることになるからだ。

妊娠・育児を始める前から、両立を不安に思う必要はない。むしろ子供を産む前に、新しいことを始めるべき

先週、「イクメン礼賛」だけでは解決しない、キャリアと育児を両立する女性活用問題 という記事の中で書いたが、私自身、まだ結婚も決めていない女性若手社員や、就職活動中の女子学生から、「キャリアを考えるといつ産むべきか」「どうやって両立すればよいのか」など、キャリアと出産・育児の両立についての不安や、質問を受けることが度々ある。

女性が、実際に妊娠するはるか前から、育児との両立を不安に思い、キャリア選択を躊躇するのは日本だけではなく、アメリカでも同じであることが、この本にも書かれている。シェリル・サンドバーグはそんな話の象徴として、ある本に書かれている5歳の女の子の話を紹介している。

その子には大好きな男の子がいるのだが、ある日動転した様子で家に帰ってくると、「あの子もあたしも宇宙飛行士になりたいの。困っちゃう」と言う。ママは意味がわからず、一体何が問題なの、と尋ねた。「だって私達がふたりとも宇宙に行っちゃったら、誰がベビーの面倒を見るの?」
なんと5歳にして、宇宙飛行の最大の障害は子育てなのだ。

私自身、妊娠しようと思って活動していた時、そして妊娠がわかった時、自分でリーダーシップを取って、新しいことを始めることを躊躇した。自分が何かを始めても、体調を崩したり産休に入って中途半端になるかもしれないし、とか、責任をとれなくなるかもしれない、と不安に思い、新しいことを始められないでいたのだ。
その後、「リーダーシップと妊婦であることを両立する5つの方法」という記事で書いたように、そんな状況であってもリーダーシップを取って何かを始めるためのコツをつかみ、出来るようになった。
しかし、もっと前から悩まずに、当たり前のように出来ていれば良かったのに、と今でも思う。

シェリル・サンドバーグも言う。 「子育てのために仕事を辞めようか考えるのは、子供が生まれた時。その前ではない。ましてや何年も前ではない」。むしろ、子供を持つ前こそ、新しい仕事を始めるべきだと後輩たちに勧めているのである。こんなエピソードがある。

内定通知を出すと、彼女はいくつか確認したいことがあるからとオフィスにやってきた。(中略)ミーティングが終わって彼女が立ち上がった時、私は一歩踏み込んでみることにした。「もしかするとあなたは近々子供を産みたいと計画していて、内定を辞退しようと考えているのではないかしら。」(中略)彼女は戻ってきてまた座った。「是非お話させて下さい」。そこで私は言った。直感には反するかも知れないが、子供を持つ直前というのは、実は新しい仕事を始めるのにまたとない良い時期なのだ、と。新しい仕事が面白くて得るものが多いと分かれば、出産後にわくわくして職場復帰できるだろう。もし、転職を考えるような今の仕事にとどまるか、あるいは仕事からすっかり離れた状態で出産したら、もう犠牲を払ってまでやる価値が有るようには思えなくなるかもしれない。彼女はフェイスブックに入ることを決めた。働き始めた時には妊娠しており、8ヶ月後に無事出産。4ヶ月の産休を取ると、大好きな仕事に戻ってきた。

全くそのとおりだ。
私は両立することの不安を克服し、リーダーシップを取って新しいことを始めた結果、今は早く産休・育休から戻って、自分が始めた新しい仕事を再開することにワクワクしている。そして、産休に入った今でも同僚やクライアントに呼ばれ、会議に出席したり、電話やメールで問い合わせが来たり、頼りにされているのがわかる。産休・育休が明けて、帰ってくる場所が自分にはあるのだ、と思う。自分がいなくても仕事が進むよう、引き継ぎをきちんとするのは大切だが、新しいことを始めることを躊躇する必要は全くないと、今は思っている。


シェリル・サンドバーグのこの本を読んで思うことは山のようにあるが、そろそろ切り上げよう。この本は、そのような形で、読み手の人生のステージや直面している課題になって、どの部分が響くか、ということが変わってくる。そのくらい、たくさんの課題について、データや、彼女自身の経験と思ったことが詰め込まれており、何度読んでも読み飽きることのない名著だ。むしろ、読み飽きてしまうくらいの時には、 女性のリーダーシップに関する様々な問題が解決している、望むべき時代なのかもしれない。 

書評:「女神的」リーダーシップ

女神的リーダーシップ 世界を変えるのは、女性と「女性のように考える」男性である
ジョン・ガーズマ、マイケル・ダントニオ
プレジデント社
2013-11-28


世界で成功しているリーダーたちが持っている資質には、「表現力が豊か」「共感力がある」「利他的である」など一般的に「女性的」と言われる資質が多い、という。作者は2008年のリーマン・ショック以降、人々の消費のあり方や、ビジネスのあり方が大きく変わったことを描いた前作の「スペンド・シフト」を書くための取材の中で、消費やビジネスだけではなく、リーダーシップのあり方も大きく変わってきているのではないか、という事に気づき、この本を上梓したという。

ビジネス書の類を期待している人には、若干の違和感があるだろう。この本は、「メインメッセージがあり、それを裏付ける証拠が1,2,3と並んで・・・」というロジカルシンキングに書かれているタイプの本ではないからだ。「リーダーに必要な資質は女性的な要素が多い」という主張は、最後まで明快に裏付けされることなく進んでいく。

しかしながら、イギリス、イスラエル、日本、コロンビア、中国と南北東西あらゆる国を筆者といっしょに旅をする中で、出てくるリーダーのひとりひとりは、確かに20世紀型の強くマッチョなリーダー像ではない。柔軟で、共感力があり、コミュニケーション力に長けていて、素直で愛されるキャラクターであることが浮き彫りになっている。それを「女性的」と呼ぶかはともかくとして、現在世界を変えているリーダーシップが過去と異なって来ていることは明らかだ。

何よりこの本を読んでいて楽しいのは、出てくるリーダーひとりひとりの描写が素晴らしく、物語として息を呑みながら、時には共感し、涙を流しながら読むことが出来ることだ。10カ国以上の国で作者が取材して出会ったリーダーや起業家ひとりひとりが、現在情熱をかけて推し進めていることだけでなく、彼らのバックグラウンド、何故それを推し進めることになったのか、過去の経緯やしてきた苦労も細やかに書かれている。リーダー達のキャラクターが動き出してくる、そんな本だ。そして読み終わった時には、本当に筆者とリーダーシップを求めて世界中を旅してきたような気持ちになる。

なお、もし、あなたが「リーダーに必要な資質は女性的な要素が多い」ということをロジカルに裏付けたい、と考えているなら、この本を読むだけでなく、コンサルティングファームのマッキンゼー・アンド・カンパニーで出されている「Women Matter」という報告書を読むことをお勧めする。この報告書では、リーダーに必要な資質を9つの要素に分け、世界のビジネスリーダーへの調査に基づいて、「女性リーダーに多く見られる資質」「男性リーダーに多くみられる資質」「両方に見られる資質」に分類した上で、現在各国で必要とされるリーダーの資質には、確かに「女性リーダーに多く見られる資質」が多い、ということをロジカルに検証している。

McKinsey&Company "Women Matter 2"

いずれにせよ、これからの世界を変える、現在求められているリーダーシップ像を知る上で、これらの本は非常に参考になるのではないだろうか。

参考文献:

McKinsey&Company "Women Matter 2"

スペンド・シフト ― <希望>をもたらす消費 ―
ジョン・ガーズマ
プレジデント社
2011-07-20

 

リーダー型女性が「頼る・後方支援に回る」スタイルを築く8つの方法(後編)

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妊娠した時、または育児で、短い時間しか使えなくても効果的なリーダーシップを発揮するために、どうやって「頼る」「後方支援に回る」スタイルのリーダーシップを身につけるか。
男女関係なく、こういったフレキシブルなリーダーシップスタイルは、限られた時間で最大の効果を上げるために重要なスタイルだ。

前編ではマインドセットをどう変えればよいかについて書いたが、
後編では、このリーダーシップスタイルに向けて身に付けるべきスキルや技4つについて書こうと思う。

5. Will/Skillマトリックスの考え方を身につける

最近はコーチングの本などでも、色んな所でお目にかかるようになったWill/Skillマトリックス。
他の人が楽しんで仕事をし、力を発揮できる環境を整える「後方支援型リーダーシップ」では、それぞれのメンバーが仕事の内容に対して、今どのような状況にあるか正確に掴み、状況に応じて正しく対応することが重要となる。

Will/Skill マトリックスとは…

それぞれの人の状況を理解するため、やっている仕事に対するその人のやる気と、仕事に必要なスキルが高いか、低いかで4つの次元で評価するのが、Will/Skill マトリックスだ。
Will skill 2

①の象限にいるのは、今やっている仕事に対し、やる気もスキルも十分にある人。
ここは、基本スタンスとして完全お任せをする。余計な口は出さない。
ただし、そんな人でも詳細の案件によっては十分なスキルが無かったり、やりたくないことがあったりするので、その状況は細かく見てあげて、適宜異なる対応する。

②は、スキルは高いがやる気がどうも出ない、という人たち。
彼らには、今やっている仕事にやりがいを与えて、やる気を引き出すのが鍵になる。
その人の話をよく聞いて、やる気をなくしている理由を見つけ、解決していく。
休みが足りず、疲れているなら、休ませてあげる。
自分の出番が少なく、やる気を失っているなら、出番をたくさん作ってあげる、など。

③は、やる気はあるけれどスキルがない人たち。
彼らには、スキルをコーチングしてあげるのが最高の方法だ。
その時、どんなことも細かく指導するのではなく、困っている点をよく聞いて、その点に絞って解決策を与えることが大切だ。

④の、やる気もスキルもないという人たちには、しかたがないけれど、こちらが細かく指示を出し、言ったとおりやってもらうしかない。もしかしたら、本人たちもプロジェクトから外れることを期待しているかもしれないので、その場合はその方が両者にとってベストかもしれない。

Will/Skill マトリックスを使い間違えると...

対応の仕方を間違えると、非効率になり成果を得るのに時間がかかるばかりか、メンバーのやる気を損なってしまったり、不満だけが残ってしまうこともある。

例えば、③番のやる気はあるが、スキルが無いだけの人に、④番のように細かく命令したりすると、つまらなく感じ、やる気を失ってしまうだろう。やる気に応じて、必要なところだけやり方を教えるに留める必要がある。

逆に、③番の人に、①番のように完全に任せきってしまうと、その人はスキルがなくて困っているのに放任されることになり、かえって不満が残るだろう。もしくは、プロジェクト自体の失敗につながることもある。

チームメンバーのやる気やスキルは、プロジェクト単位ではなく、細かいタスク、サブタスクのレベルで異なっているはずなので、細かく状態を見極めて、使い間違えないことが大切だ。

5. 自分らしい「お願いの仕方」「頼り方」のスタイルを築く

自分で何でもリードして、やってしまうタイプのリーダー型女性は、そもそも人にお願いしたり、甘えたりすることに慣れていない人が多いかもしれない。
30代も過ぎれば、自分のスタイルが築かれているので、今更「頼る」「甘える」なんて私のスタイルじゃない!という人もいるだろう。

そういう場合は、まず自分らしいお願いの仕方のスタイルを作ることだ。
別に、「お願い♡」と可愛らしく甘えるだけがお願いではない。
スタイルを築くまでは、ある程度試行錯誤が必要なので、最初のうちは自分でやっていて気持ち悪いと思うこともあるが、徐々に自分らしいスタイルを見つけていくことが出来るだろう。

ここでは、女の子らしく甘えたり、お願いするのが不得意な女性に使えそうな「お願いスタイル」を4つほど紹介する。

いいとも!型お願いスタイル

「笑っていいとも」で、「XXしてくれるかな?」とタモリが聞くと、皆が「いいとも!」と答えるが、このノリでお願いするのが、いいとも!型お願いスタイルである。
男勝りな感じの女性で、自分は可愛らしいのと対極にある、と思っている人は、このスタイルまたはこの派生系を身につけると良いかもしれない。
「明日までに、XXやっておいてくれるかな?」と爽やかに言うのがコツ。
無事に終わったら、感謝の言葉を忘れずに。

頼りにしてるわ型お願いスタイル

男性で、このスタイルを築いている方が実は多い。
お願いする人に対し、自分は全幅の信頼をおいている、頼りにしている、という空気を作りながら、お願いするスタイルがこれだ。
言い方としては「あなたのことを頼りにしているわ」「これが出来るのは本当にあなたしかいないの」といったところか。(男性なら「君のことを本当に頼りにしているよ」「君だけが頼りだよ」と言うところ)
このスタイルは、相手とある程度の信頼関係が構築されていることが前提である。

無事に終わったら、「やっぱり頼りになるね」「やっぱり信頼できるわ」など、信頼度が増したことを伝えながら、ありがとうと感謝の気持を伝えよう。

拝み倒し型お願いスタイル

そんな偉そうなスタイルでお願いできない、どちらかというといつも謝ってばかりなので、という人は、拝み倒し型お願いスタイルから始めても良い。
「本当に申し訳ないんだけど、XXお願いできますか?」
「本当にごめん。どうしてもXXXをお願いしたんですが、頼んでもいいですか?」
など、恐縮しながらお願いするのが「拝み倒し型お願いスタイル」である。

断られた時は、すかさず「誰か他にお願いできる人を教えてもらえますか?お願いします。」とお願いスタイルのまま食い下がること。
また引き受けてもらった時は感謝を忘れずに。

巻き込み型お願いスタイル

若干高度な技で、やり方を間違えると嫌われることもあるが、慣れると一番効果的なのがこのスタイル。
お願いする対象の人を、お願いしたい仕事に早い段階で巻き込み、いつの間にかその人がリーダーシップを取るのが当たり前の流れを作るのが、この巻き込み型お願いスタイルである。
例えば、その仕事に関する質問を事前から投げかけて頼りにしたり、インフォーマルなミーティング等に参加してもらうなど、徐々に関わり度合いを上げていく。
その時点で、その人の仕事への興味や適性もある程度判断できる。

ただ、なし崩し的に巻き込んで断れない状況だけを作ってしまうと、嫌われることもあるので、どこかの段階できちんと本人の意志を確認する方が良い。

「お願いの仕方」は、その人の個性と相手の個性の組み合わせで、多種多様な技がある。
良ければ、皆さんの技も、コメント欄等でご紹介ください。

7. 頼まれた時は、30分カウンセリングをする

リーダー型女性は、「人に頼む」どころか人に頼られることも多く、断れないことも多いだろう。
世の中には「断る力」などの本も出ている。いわゆる「Yes No Yes」など、うまく断るスキルを身につけるのも大切だ。
でも断るのではなく、限られた時間で、相手に最大限の価値を届けると、もっと良い結果を生むことが多い。

人に何かをお願いされた時、まずは出来合いのものを送るとか、他の人に頼むということで解決できるかを考える。
それで解決するのが難しい場合、もしくは解決に時間がかかりそうな場合、私は30分間その人と時間を取るようにしている。
その30分の中で、何がその人にとって課題で、何を解決すれば、その人は満足するか、その人のためになるか、ということだけを考え、その場でできることだけを実施する。
自分の宿題は残さない。

実は自分が解決して、その人のために実施してあげるよりも、短時間でその人の話を聞き、その人の役に立つようにその場でできることだけをするほうが、はるかに相手に感謝される。

8. こちらからマメに「ほうれんそう」することで、相手の「ほうれんそう」を引き出す

社会人になり、最初に叩き込まれる「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」であるが、人に仕事をお願いする立場になっても、このほうれんそうはとても大切だと思う。

お願いした仕事の状況がどうなっているか、報告してもらうのを待つのではなく、こちらから積極的に、自分が知っている状況を報告したり、相談したりする。
「報告して!」と要求するより、こちらから相談することで、報告の機会を作ってあげるほうが、向こうもやりやすく、スムーズにほうれんそうが出来る。
ほうれんそうは、先輩とか上司に対してのみするものではなく、後輩や部下に対しても行うと、見本にもなるし、より効果的な手段なのだ。

以上、「人に頼む」「後方支援に回る」タイプのリーダーシップスタイルを築くにあたり、使えると思うスキルを4つほど挙げてみました。 

前編はこちら→ リーダー型女性が「頼る・後方支援に回る」スタイルを築く8つの方法(前編)
 

リーダー型女性が「頼る・後方支援に回る」スタイルを築く8つの方法(前編)

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一昨日、リーダーシップと妊婦であることを両立する5つの方法という記事を書いた際、様々な反響を頂いた。
その中で、複数の方からこのような内容のコメントを頂いた。
職場で管理職に就くなど出世していたり、男性と対等に仕事をしている女性は、もともとリーダータイプで「人の先頭に立って頑張ろうと思う人」や「負けず嫌いな人」が多く、そもそも「人に頼る」ことが出来ずに苦労していることも多い。 
そもそも「頼る」が苦手な女性が、どうやって「頼る」とか「後方支援に回る」ことが出来るようになるのか
実は考えたら、私自身がついこの間まで、そういう人だった。

典型的な長女タイプ。
責任感が強く、自分がやらなきゃ、自分が何とかしなくちゃ、という気持ちが人一倍強い。
「頼る」「お願いする」のが下手。
その結果、自分で抱え込むが、なまじやれるだけのスキルも体力もあるので、何としてでもやり遂げる。
飲み会があれば、だいたい幹事。場を盛り上げるのも自分の役目。
先輩から見れば「あいつは生き方下手だけど、しっかり任せられる後輩」だから、評価も高いし、出世も早い。
でも後輩から見ると、十分に任せてもらえないし、ちょっとでも失敗すると逐一指導が入って働きにくい、萎える先輩。

立場が上がり、後輩が増え、自分の今までのスタイルではうまく行かないことが徐々に増えてきて、でもどうやって変われば良いかわからず、非常に苦労していたところだった。
それが、昨年の夏頃から、徐々にスタイルが変わり、今は本当に全く違うリーダーシップのスタイルになった。
後輩には色々頼るし、後輩の後方支援を買って出る、自分がやるのではなく、皆がやりやすい環境を整えることに専念するスタイルにいつのまにか変わっていた。
先日、昔一緒に働いていた後輩数名から「本当に 変わりましたね」とか「こう言うと失礼ですが、昔一緒に働いていた時より助かりました」とか言われたから、変わったんだろう。
まあ、こういうブログ記事を書いて役に立とうとか思っているあたり、根本的な性格は変わっていないのだが、少なくとも職業人格が変わったのだろうと思う。

そういうわけで、私自身が、どうやって人に頼ったり、後方支援に回ったりするスタイルに変わることが出来たのかを書けば、役に立つかもしれないと思い、今日は一日自分を振り返って分析してみた。

やはり、そうやって苦労している中で、妊娠したことは非常に大きな転機だった。恐らく結婚したことも。
そしてそういう転機に、良い後輩たちに恵まれた。
その結果かもしれないが、次に書く8つのことを意識するようになったのが、一番大きな変化だった。
逆に、妊娠しても、良い後輩がいても、この8つを意識しなければ、何も変わらなかっただろう。

そしてこれら8つは、男性にとっても重要となる。
男女ともに、育児など他のことと両立し、仕事に専念できる時間が限られる状況で、フレキシブルで効率的、効果的なリーダーシップを取るために役に立つマインドセット、技やスキルだ。

最初の4つは、マインドセットの変化に関するもの。今日はまずその4つについて書く。

1. 「自分はいつ倒れるか、いなくなるかわからない」ということを大いに自覚する。
  そして自分がいなくても回る体制を作ることに全力を尽くす


後づけで考えれば当たり前なのだが、たくさんの仕事を成し遂げるには、それぞれの仕事は自分がいなくても基本的には回る体制になっており、本当に必要なときだけ自分が出て行くのが理想的である。
何でもかんでも自分がやっていたら、スケーラビリティがない。それ以上広げられないのだ。

思い出せば、昔MITで起業家のリーダーシップ論をやっている時、そんなことを習ったのだった。
起業家として最初に成功するタイプの人は、何でも自分でやってしまうタイプが多く、自分がいなくても回る体制を築くのが下手なケースが多い。そういう人がいつまでも社長をやっていると、企業として大きく成長するのが難しくなるから、起業する創業者と、ある程度大きくなってから運営する社長は変えたほうがが良い
もちろんその人が成長して、運営も得意になれば話は別だが、せっかく創業者としてのスキルが有るのだから、それをやり続ければ良いという発想だ。

一方、通常の組織であれば、事業会社であれ、プロフェッショナルファームであれ、立場が上がるにつれて自分の責任範囲は増える。
当たり前かもしれないが、自分がいなくても回る体制をつくることに全力をつくすことが、広い範囲をうまく運営するためには重要になるのだ。

私の場合は、自分が妊娠したのがきっかけで「自分がいなくても回る組織」というのを真剣に考えるようになったわけだが、考えたらいずれ当然のように必要になるものだったのだ。

2. 「チームがやりがいを感じて楽しんで仕事している状況が、チームの力を最大化できている状態」だと知る。
そして自分の役割は、そういう環境を作ることだと自覚する。 

これも書くと当たり前なのだが、組織として一番力を発揮できている状態とは、ひとりひとりのメンバーがやりがいを感じ、自分が価値を発揮できていると思えて、楽しめており、最大限の力を発揮できている状態だ。

北風と太陽の話ではないが、北風のようにあなたが奮闘して細かく指導をしてメンバーの力をあげようとしたり、あなたがいくら頑張っても、組織の力は最大化出来ないのである。
むしろ、太陽のように、一人ひとりがやる気が出て、自然と仕事をしたいという環境を整える方が効果的である。

環境づくりに全力を尽くそう、それぞれのメンバーがやりやすいように後方支援に回ろう、と思い始めると、全てが全く違う方向に回り始めることに気がつくだろう。

3. 「頼ることは人を育てることだ」と発想を転換する。


責任感の強い人にありがちなのが、人に頼るのは、何となく自分がサボっているような気がする罪悪感である。
あと、負けず嫌いな人で、人に頼ると自分の処理能力のなさを認めた気がする、と思ってしまう人もいるだろう。

そうではなく、自分の今の役割は、自分がいなくても回る人を育てることであり、その人に頼ることは、その人を育てるために最も効果的で、効率的な方法だと思うことだ。
頼ることが、人を一番成長させるのである。

あとは任せると決めたら、任せきる。細かいことにはこだわらない。
自分が思っていることと少し違っても、大勢に影響がなければ、その人の持ち味だと思ってスルーする。
そしてやりきってくれた時には、心から感謝し、それを表現する。

余談。こんなことを書くと一部の男性に嫌がられるに違いないが、家庭において、妻が夫を「育てる」状況でも同じマインドセットが重要だ。
一般的に、夫婦では女性のほうが精神的にしっかりしている事が多い上、特に子供が生まれた時など、親としての自覚が生じるのは、子供を身ごもっている女性のほうが早いと言われている。
そのため、いろんな精神的負担、家事などの負担が全て妻にかかってしまい、産後クライシス、そして離婚、などという話もよく聞く。
自分ができることでもそうでなくても、何でも夫に頼る、夫を立ててお願いする、一度お願いしたら口を出さない、出来たら感謝する、というのが、夫として、親としての自覚を早く目覚めさせることにつながるだろう。

4. 「私がいなくても世界は回る」ということに気づく

リーダー型の女性は責任感が強く、どんなことでも、自分が何とかしなきゃ、頑張らなきゃ、と思いがちである。
プロフェッショナル意識の強い人ほど、そうだろう。
しかし、実際には自分が何とかしなくても、何とかなったりすることが多い。
むしろ自分がいないほうが、現場で何とかしようとやる気になり、力が発揮できて良い結果になることもある。

私は夫に「あなたがいなくても、世界は回るんだよ」といつも言われている。
ここで、彼自身が「俺がいるからお前は頑張らなくていいんだ」などというタイプではないことがポイントで、彼自身、特に頑張らず、気楽に生きている。
本当に自分が必要となる場所でしか頑張らないのである。

この、本当に自分が必要なところを見極めてそこだけ頑張る、というのはリーダーとして非常に大切なことで、これを身近で見ていて、自分が変わったのもあるかもしれない。

後編は、「頼る」「後方支援型」リーダーシップを行うための技やスキルについて書く。

後編はこちら→ リーダー型女性が「頼る・後方支援に回る」スタイルを築く8つの方法(後編)
 

リーダーシップと妊婦であること、を両立する5つの方法

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変なタイトルだが、私が妊娠前から初期にかけてずっと悩んでいたのは、これだった。

「リーダーシップ」とは、自分が何かをしなくてはと思って、周囲の人や物に働きかけ、「動かない人・ものを動かす力」であり、「何か新しい動きを作ったり、何かを変えていく力」のことだ。
例えば、伝統的な組織で根回しをし、人の気持ちを動かして、今までのやり方を変えていくのはリーダーシップと呼べるし、周囲の同僚に働きかけて、労働環境を改善していくのもリーダーシップである。
組織の上からトップダウンで動かすのも、平社員が草の根で動き方を変えるのも、どちらのタイプもある。
どのような仕事でも、何かを作ったり、変えたり、動かしている人たちは皆リーダーシップを発揮している、と言える。

私がやっているコンサルタントという職業は、クライアント企業を変革するのが仕事で、リーダーシップをとることが常に求められる。
更に、私のいる会社は、リーダーシップの権化みたいなところで、入社面接で最も重視されるのはリーダーシップであり、新卒の頃から仕事のみならず遊びに至るまでリーダーシップを取って積極的に動くことが求められ、卒業した人々はリーダーシップについてたくさんの本や教科書を出している。
立場が上がってくれば、尚更重要になるものだった。

にもかかわらず。

昨年の夏、私は妊娠を機に、リーダーシップを取って何かにチャレンジすることが出来なくなった。
「らしくないね」、という人がいた。「あいつ、やる気無いんじゃないの」と噂をする人もいた。
気持ちとしてはやりたいが、妊婦であることと、リーダーシップを発揮することをどうやって両立すれば良いのか、わからなくなってしまったのだ。
その後数ヶ月、苦しみながら模索し、どう両立すれば良いのか、だんだんわかってきた。
このエントリでは、その方法論について書こうと思う。

妊娠中、または妊娠をしようとしている時、女性がリーダーシップを発揮するのが難しくなる事がある。
その理由は主に2つある。

ひとつは体調だ。
妊娠初期は、個人差はあるが、つわりで体調が悪く、思うように頭が働かない、体が動かないことも度々ある。
二日酔いの気分の悪さがずっと続いている状況で、人を動かし、組織を動かして、何かを率先して進めていこう、と決意することができるか? 中々大変なことだ。
何事にもやる気が出ず、億劫で、何もやりたくないと思ってしまうことも多い。
ましてや、体調が悪いのを押して自分が疲れるだけなら無理をしてでもやってやろう、と思うが、今は自分が体調を崩すとお腹の赤ちゃんに影響するので、なかなか無理もできない。

もう一つは、数カ月後には産休を取らなくてはならないのに、今から責任のある新しいことを始められない、という思いだ。
商品開発にいて、新しい商品の開発を担当し、自分が完成に至るまでの全責任を持てるか。
営業にいて、新しい顧客を開拓し、自分が会社を代表して顧客に責任を取ることができるか。
妊娠中の女性だけでなく、今から妊娠しようと思っていたり、不妊治療をしている女性も、いつから自分が休みに入るかわからないと思い、責任を取るのは難しいと感じる人は多いだろう。
責任感が無いからではなく、責任感があるからこそ引き受けられない、そういう女性は多いのではないか。

また、上の2つほど決定的ではないし、どちらかと言えば克服すべきものだが、不安というのもある。
人は、何か不安がある時、別のことに集中するのはなかなか難しい。
男性にとっても、家庭の問題や病気など不安があるとき、己をマインドコントロールし、仕事でリーダーシップを発揮するのはなかなか大変だ。
妊娠初期は、染色体異常で流産する確率が2割程度あると言われる。妊娠がわかった女性は嬉しい半面、腹痛や出血などちょっとした体の変化のたび、赤ちゃんは大丈夫か、と不安に思う。
どのような状況でも自分をマインドコントロールして不安を乗り越え、リーダーシップを発揮して何かをやり遂げるかどうかは慣れもあり、立場が上がるほど必要になるスキルであるが、30代など若いうちから当たり前に持っている人は少ない。

どの国のどの企業でも、管理職や経営層に出世するためには、リーダーシップを発揮できるかどうかが決定的に重要になることが多い。
実際、女性の経営層や管理職が男性より少ない理由として、女性のほうが責任感を持って何かを成し遂げるリーダーシップが少ないから、と指摘されることが多くある。
そんな中で、女性としてリーダーシップを発揮したくても、出来ないことは辛い。

そんなわけで、昨年の夏、私はかなり辛い思いをしていた。
例えば、私には今までずっとやってきて、ノウハウがたまっている仕事があるが、自分がリーダーシップを取って、それを他国や異なる産業に展開をすることを求められていた。
求められるだけでなく、自分でもそうしたいと思っていた。
しかし、妊娠が判明し、来年には産休を取るかもしれないのに、新しいことを開始する無責任なことは出来ない、と思い、思い切った行動を取れずにいた。

短期間で成果が求められる難しいプロジェクトの責任者を、お断りしたこともあった。
こんなこと、これまでにはなかったことだ。難しいプロジェクトこそ、やりがいもあり、大好きだったのに。
しかし、プロジェクトの責任者として、クライアントに十分満足な成果を届けるためには、徹夜をしてでも完成させるし、自分が駆けずり回ってでも情報を取ってくる必要があることもある。
いざというとき連日徹夜をして、駆けずり回れるか、と言われると、今は無理だ、と判断した。
自分らしくないな、と思い、落ち込んだ。

それから数ヶ月経って、昨年の10月頃から、徐々にリーダーシップと両立する方法を編み出していった。
その結果、様々なことに取り組めるようになり、良循環が回るようになってきた。

その良循環が回るようになった、5つのポイントを書いてみる。
どの点も、何故このことに気付かなかったのだろう、と今は思うことばかりだ。
次にまた妊娠をすることがあったら、かなり初期から、または妊娠前から実施したいと思っている。

1. ひとりでやらない。必ず仲間を見つけ(焚きつけ)、ダブルヘッダー以上でリードする

妊娠中、または近いうちに妊娠しようと思っている女性であっても、新商品の開発や新規顧客開拓など、新しいことをリーダーとして始めることを諦める必要はない。
同じようにやりたいと思っている仲間を見つけ、またはその人を焚き付けてやる気にさせ、ダブルリーダーになれば良いのである。

「この商品のことを一番知っているのは自分だけだから、自分しかできない」となどと思う必要はない。
むしろ、自分だけが知っていることだからこそ、ダブルリーダーになっても価値を発揮できるのだ。
自分の役割は、自分だけが知っているそのノウハウを伝授することだ。
相手の役割は、自分が体調面もありリードできない時に、やってもらうこと、そして自分が産休に入っても継続的にリーダーシップを取ってもらうことだ。

産休が終わって、自分が帰ってきたら、ダブルヘッダーを再開すれば良いし、自分がいなくても回るようになっていたら、また新しいことをリードし始めれば良いことだ。

会社の仕組みとしては、妊娠した女性を「プロジェクトから外す」のではなく、他の人とダブルリーダーにする仕組みを導入することが、女性のリーダーシップ育成に役立つだろう。

2. 他の人をリーダーに据え、自分は後方支援に徹するタイプのリーダーシップを学ぶ。
  または、自分がいなくなってもリードできる人を育てる。


自分が前面に出て、物事を推し進めるだけがリーダーシップではない。
人前に出るリーダーは他の人にやってもらい、自分は後方でその人を支援しながら、チームとして物事を動かしたり、変えたりしていくのも、立派なリーダーシップである。

他の人、特に後輩をリーダーとして仕立て、足りないスキルを後方からサポートすることに徹すれば、その人の成長にもつながるし、感謝され、信頼関係を構築することも出来るだろう。
自分は前面には出ないが、いつでも電話や社内会議で相談してもらい、行くべき方向性を示したり、やり方を教えたり、やる気を出させてあげたりすればよい。
と書くと、まるでその人の上司みたいだが、実際、本当の意味での管理職になる良い練習になるだろう。

このやり方を成功させるには、信頼できる人(勝手に進めないで、失敗する前にちゃんと相談してくれるなど)を探し出すのも重要になる。

会社の仕組みとしては、妊娠した女性が後方支援でも価値を発揮しやすい仕組みを整える(会議体を電話会議中心にする、後輩をリーダーとして育てる仕組みを導入するなど)のが、女性リーダーを増やしていく、または子育て中の男性も含めてフレキシブルなリーダーを増やしていくのに役立つだろう。

3. 妊娠中でもリードできるタイプのことを見つける

妊娠中で体調がすぐれない時でも、そこまで負担がない、または長期的な責任が必要とされない案件というのは、探してみると意外に多く存在する。
今やっている案件が、妊娠中だと負担が多く、最後まで責任を取れないという場合でも、ただ辞めるのではなく、そういう代わりの案件を見つけて、シフトすることを提案する方が圧倒的に良い。
リーダーシップが無い、信用出来ない、と思われるリスクを避けられるし、自分にとってもリーダーシップを維持し続ける良い練習となる。

4. 一緒に仕事をする人、自分をサポートしてくれる人には包み隠さず話す

これは最も後悔していることの一つだ。
当時は、自分は高齢出産だし、体調も優れなかったので、流産する可能性が高いだろう、と思っていて、一緒に仕事をしている後輩にも話せなかった。
今は、たとえ残念な結果だったとしても、同じプロジェクトで一心同体に仕事をしてくれる後輩には話しておくべきだった、と思っている。
噂が広がり、心ない噂で傷つくことがあったとしても、一緒に仕事をする一部の人達から信頼を得られることのほうがずっと大切だ、と今は思う。

自分が傷つくかもしれない、デリケートなことを包み隠さず人に打ち明けるのは、とても難しいことだ。
でも、古今東西どのリーダーシップの教科書にも書いてあるように、自分の悩みや秘密を相手に包み隠さず打ち明けることは、相手と親密になり、相手の信頼を得るために最も効果的なことだ。
多くの場合、相手はあなたのことをサポートしてあげようと思うようになり、最大の助けを得ることが出来る。

最終的に話すかどうかはあなた次第だが、相手の信頼と助けを得るためには秘密を打ち明けるのが最も効果的である、というリーダーシップ論があることは知っておいても良いだろう。

5. かなり先のことまで予測・計画し、長めのリードタイムで行動することを優先する
   頼まれたことは出来るだけその場で解決、あとに残さない


最後は妊娠中に限らず、常に心がけておくべきことだが、妊娠中もリーダーシップを取って何かを進ませ続けるためには特に重要になるポイントだ。
妊娠中は、いつ体調がどうなるかわからない。突然入院、なんてことも起こりうる。
いざというときの馬力が効かないし、その場の力で何とか乗り切るなどという技が使えないことも多くなる。
ので、かなり先のことまで予測して行動、早め早めに物事を進めておき、いつ自分が倒れても大丈夫なようにしておくことだけに、
また、頼まれたことは出来るだけその場で、またはその日のうちに解決してしまい、ためておかない。
そうすることで、自分も余裕を持って安心して物事を進めることに専念できるし、周りも安心して妊娠中の自分に任せておく事ができる。

妊娠初期は体調も優れず、何をするにも億劫で、何でも後回しにしたい気分になることが多いものである。
そんな中で、周囲の信頼を維持しながら、何かを進ませるためには、先まで計画すること、とにかく先に終わらせること、それだけをなんとか優先して進めるのが良い。


実はどのポイントも、妊娠しているかに関わらず、もっと言うと男女にかぎらず、フレキシブルなリーダーシップを取るために大切になるポイントだと思う。働き方が多様になっている今だからこそ、男女ともに大切なスキルかもしれない。

この記事の続編はこちら
・ リーダー型女性が「頼る・後方支援に回る」スタイルを築く8つの方法(前編)
・ リーダー型女性が「頼る・後方支援に回る」スタイルを築く8つの方法(後編)
 
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