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妊娠中、そして授乳中の現在、辟易とするのが、妊婦や授乳婦に対する禁忌の多さ。
ただでさえ、妊娠や育児で大変な生活を送って、お酒など当然のように我慢しなくてはならないものも多くある中、あれもダメ、これもダメと周囲に言われると、ストレスが溜まる。
妊婦向け雑誌などにも、「XXは食べないほうが望ましい」という食材が数十種類も載っており、いったい何を食べればよいのか、と思う。

そういう周囲の人達が言う禁忌には、特に科学的根拠のない都市伝説も多く、常識で考えれば「そんなわけないやろ!」と思うものも多い。
中には従った方が良い物もあるが、常識で考えておかしいものについては、さらっと受け流すべき。
ましてや食べてから「XXを食べてしまった・・」と激しく後悔するなら、忘れて前向きに生きたほうが胎児のためにも良いと思う。

この記事では、妊娠中や授乳中に私が実際に出会ったおかしな食事制限と、そもそも妊婦や授乳婦への制約が多いことってどうなのか、について書く。

妊娠中の禁忌-酒とカフェイン以外は、普通にバランスよく

妊娠中は、母親の血液が胎児に直結しているのだから、禁忌がある程度多いのは仕方がない。
例えばアルコールやカフェイン等は避けたほうが良いし、有機水銀が含まれる大型魚は多く食べ過ぎないほうが良いのは確かだ。
でも、今まで普通に食べていた普通の食べ物を制限しすぎるのはどうなのかと、思っている。

例えばゴーヤ。
苦味の成分である「キニーネ」が流産を引き起こす可能性があるからダメ、と妊婦向け雑誌にも書いてある。
ゴーヤがダメなら、沖縄の人はどうなるのか。
実際、沖縄ではゴーヤは毎食よく食べられていて、当然妊婦さんも食べているわけだが、沖縄の流産率が全国で際立って高いわけではない。
むしろ、ゴーヤはビタミン豊富な食材で、夏バテ解消にも役立つ。
もしゴーヤが好きな人で、周囲にダメと言われたら、「沖縄では妊婦も普通に食べているらしいよ」と言えばよろし。

また、ナスやトマトは体を冷やすから良くない、という話があるが、これも疑問噴出だ。
確かに「秋ナスは嫁に食わすな」などとは昔から言われるが、それって科学的根拠あるのか。
トマトがダメ、と言われたら、イタリア人の妊婦は一体どうすればよいのか。
そんなことよりも、普通に水や牛乳を常温で飲むほうが、体を冷やさないのには役立つのではないか、など。

カレーは香辛料の刺激が多いので良くない、というがインド人はどうすればよいのか・・・
辛いものはできるだけ避けろ、というがタイ人や韓国人は・・・
などなど、あげるとキリがないほど、妊婦への食事制限は出てくる。

妊娠中に普段と違うものを無理して食べる必要はないし、多く食べ過ぎる必要はない。
ゴーヤを普段食べていないなら、わざわざ食べる必要はないし、逆に食べていたが、つわりで食べられなくなるならやめれば良い。
カレーも普段食べていて好きなものであれば、インド人と同じで、別に制限する必要はないだろう、と思っている。

私の場合、妊娠中は生ものだけは極力避けるようにはしていた。
特に生貝など、ノロに当たっても抗生物質も飲めないから、自分が苦しむだけなので、という理由。
野菜に関しては、上記のように「それを禁止したら、XX地域、XX国の人はどうするのか」と思っていて一切従わなかった。
うなぎや寿司は好物だが、あんまり食べ過ぎても仕方ないので、週一回以下にとどめ普通に楽しんでいた。

制限が好きな人、制限を受けても特にストレスを感じない人や、もともと偏食の人は、周囲のアドバイスに従っても良いだろうが、普段から食べている栄養がある食べ物を急に制限して、ストレスがたまったり、栄養に偏りが生じたりしたら、本末転倒だと思っている。

乳腺炎に関する食事制限は都市伝説か

出産して、「ああ、もう好きなモノが食べられるんだ」と思ったら、ところがどっこい。
母乳育児をしている人には、びっくりするほど色々な食事制限を言われるようになる。

私自身、現在母乳育児をしていて、周囲から「パンやピザなど小麦粉が多い食事を摂ると乳腺炎になる。米中心の生活をすべき」「お菓子を食べ過ぎると乳腺炎になる」「チーズなどの乳製品を食べ過ぎると乳腺炎になる」などと言われ、驚いている。

授乳中は、母親が食べたものが母乳に影響するから、栄養バランスのとれた食事をするに越したことはないが、特に乳腺炎関係には科学的に無根拠なものが多い。

何故、パンやピザがダメなのか。イタリア人やフランス人は授乳中何を食べればよいのか。
小麦粉の多くはデンプンで、グルテンというタンパク質も含まれる。
デンプンの部分は、消化されれば米と変わらない。グルテンはタンパク質なので、消化されればアミノ酸になる。
そう考えれば、小麦粉が乳腺炎に悪いというのは、タンパク質やデンプンがダメと言われるのと同じであり、普通に考えて、おかしな話だと思う。

食事に関しては、アレルギーがそうであるように、人によっては体質に合う合わないがあるので一概には言えない。だから、乳製品や小麦粉を食べると全ての人が乳腺炎になるかのような言い方・書き方を止めるべきだろう。
(逆に、すべての人にとって乳製品や小麦粉が絶対に大丈夫ということもない。日本人は遺伝的に乳糖を分解できない体質の人がおり、乳製品を飲むとお腹を壊すひとがいるし、小麦アレルギーもあるから、何らかの理由で乳腺炎につながることはありうるだろう)

授乳中の食事制限に対しては、次のような記事もある。

実は関係なかった!乳腺炎と食事制限-NAVERまとめ

乳製品で乳腺炎?おっぱい都市伝説2-宋美玄のママライフ実況中継

これらの記事の趣旨は、乳腺炎は、摂る食事よりも、作られた乳がちゃんと消費されていないことで生じるということ。
したがって対処法は、食べたいピザや牛乳を我慢するのではなく、乳が溜まり過ぎないよう、赤ちゃんにすってもらうこと、吸ってもらえず硬くなった箇所はマッサージして、搾乳をしたりして外にだすことだ、という。

お菓子や牛乳がダメと言われやすいのは、これらの食材がカロリーが高く、脂肪分が多いので、乳が多く生産されてしまう、そうすると乳の量が赤ちゃんが飲む量より増えてしまうので、たまってしまいやすい、ということだろう。
小麦粉系の食事は消化が早いので、血糖値が上がりやすいことも、トラブルと関係があるかもしれないと思っている。この辺りは、もう少し研究が進めばよいのだが。

そもそも妊婦や授乳婦への制約って多すぎないか

妊婦に対しては、食事制限だけでなく、「働き過ぎたらダメ」「運動し過ぎたらダメ」など本当に制約が多い。
それは「妊婦の体を思って」だというが、本当にそうか。
因果関係がわからないことが多い中、「疑わしきは罰する」考え方で、妊婦や授乳婦ばかりに多くの制約を背負わされている気がして、腑に落ちないことが多い。

まず、ネット上の記事。
相関関係を因果関係に置き換えて、もっともらしく書いているものが多く、結果として制約を無駄に増やしているものが多いと思う。例えばこんな記事。
仕事で長時間の立ち仕事をしている場合、週に25時間以上立ち仕事をすると、赤ちゃんの頭の大きさ(頭囲)が約3%小さく生まれてくる傾向があるようです。

赤ちゃんの頭が小さいと、脳や認知機能の発達に影響がある可能性が出てきます。
妊娠後期まで仕事を続けるあなたへ。プレママの現状 
立ち仕事をしていることと、赤ちゃんの頭囲が小さく産まれることは相関関係であって、因果関係ではない。
恐らく、立ち仕事をしていると、正規産であっても早く産まれる傾向があるのではないか。
そのため、頭囲が小さくなる可能性が考えられる。別に、立ち仕事をしていると頭囲が小さくなるわけではないだろう。

そして、頭囲が小さいと、脳や認知機能の発達に影響すると書いてあるが、これは恐らく因果関係が逆であろう。脳の発達に問題があると、頭囲が小さくなる傾向があるのではないか。

結果として、繋がらない因果関係を無理やりつなげて、立ち仕事が胎児の脳の発達に良くないかのような印象を与える記事を作り上げている。

たまたまこの記事を見つけたので取り上げたが、この手の因果関係と相関関係の混同をした上、「どうするかはあなたの勝手ですが、影響は出るかもよ」と脅して、実質行動を制約するような記事がネット上には溢れている。

また、因果関係が仮にあったとしても、因果関係を考えても仕方がないことも多い。
こんな記事がある。

赤ちゃんの生まれつきの病気は母親が妊娠中にしたことのせい?-宋美玄オフィシャルブログ

彼女が記事中に書いているように、赤ちゃんが病気のとき、「母親のせいだ」など誰のせいか考えるよりは、病気をどう治療するか、どう幸せに生きるか、前向きに考えたほうがずっと良いに決まっている。

私のヨガの先生は、「妊婦は病人ではありません」と言って、お腹に負担がかかる運動以外は、普通に体を動かしていた。
産婦人科の先生は「本当は産休など取らず、出産前日まで働いていたほうが安産になるんです」と言っていた。

体調が悪いのに無理する必要はないが、普段やっていて、普通にできる事を制限しすぎたり、ましてやそのせいで赤ちゃんに異常が出るなどと脅すのはおかしな話だ。
自分の体調と、かかりつけ医と相談をしながら、出来ること、やりたいことはやっていくのが良いのではないだろうか。