空前のイクメンブームで、世の中には男性向けの育児書が溢れているが、「夫に産後の妻のキモチを分かってもらうために読んでもらう本」として、断然オススメなのがこの本。

産後が始まった! 夫による、産後のリアル妻レポート
渡辺大地
KADOKAWA/メディアファクトリー
2014-03-14


この本は育児書ではなくて、産後に夫婦でどんな壁にぶち当たるのか、ということをわかりやすく解説している、いわゆる産後クライシスを回避するための本である。

産後クライシスといえば、何と30%の夫婦が産後2年以内に離婚しているという統計(厚生労働省)、5割の妻が産後に夫を嫌いになっているという統計(ベネッセ)もあり、ウチは愛し合っているから関係ないね、と思っている夫婦でも「産後クライシス」はひとごとではない。
そこまで行かずとも、産後の大変さを夫に理解してもらえないと感じたり、家事や育児を思ったように効率よく手伝ってもらえないときに、夫に不満をぶつける前に、この本を読んでもらう方が、夫婦仲良く楽しく産後ライフを送ることが出来るだろう。

この本は、産後、妻はどれだけ体力的・精神的に参っているものなのか、家事を手伝っているのに「何もしない」と妻に怒られるのは何故なのか、産後の夫婦間のよくある誤解やすれ違いを、かわいいタッチのマンガ入りで解説しており、パッと手にとってさっと読む事ができる。
この本の作者(男性)自身が経験したことを、そのままマンガにしているのだが、マンガだけに、普通だったらお互いに言えないようなことも言い合っていて、こちらの気持ちを代弁してくれるので、読んでいて気持ちが良い。例えばこんな感じ・・・
2人目の妊娠を聞いた時、
夫「やったあぁ、家族で野球チームの夢に近づいたぞ!」

夫のテンションに対して浮かない妻の顔。
妻「2人目か…産後相当大変だよね…」
夫「何で?一人目そんなに大変じゃなかったじゃん。大丈夫だよ!
  自分で言うのも何だけど、オレ「イクメン」な方だと思うけど?
  一人目の時だってさ、頑張っていっぱい残業して、帰ったら必ずコミュニケーション取って…」
妻「なぁにがイクメン?
  遅く帰ってきてせっかく寝た子を起こすわ。寝かしつけるまで「ごはんまだ?」とかボケッと待ってるわ。
  毎晩毎晩「りょうくん可愛かった?」ってこっちは悪露や抜け毛や色んな悩みで心も体もぼろぼろだったのに、気付いてなかったんかー!!」

ただ子供をかわいがって「イクメン」を自認していた私は、妻の気持ちを知ってガクゼンとしました
妻「二人目でまた同じことの繰り返しだったら、もうオシマイだからね!」 

夫は一生懸命家事を手伝っているつもりなのに、何故「何もしてくれない」と言われるのか、など、夫がギモンに思うところも、ちゃんと妻の気持ちを代弁して書いてくれている。
例えばゴミ捨て。
この本によると、夫が一番手伝っていると思っている家事の1位は「ゴミ捨て」だが、妻が手伝って欲しいと思っている家事の1位も「ゴミ捨て」だという。
その理由は、ゴミ捨ての際、夫がやるのは、妻が家中から集めてまとめたゴミを、玄関からゴミ捨て場に移動するだけだから、ということ。一番大変なのは、家中のゴミ箱やその辺に落ちてるゴミを集めてまとめるところなので、そこからやって欲しい、と妻は思っているのだ。

全くその通り、と私も共感。
台所の生ごみの臭いのを我慢しながらビニール袋を閉め、リビングのゴミ箱はまだ半分しか埋まってないからこっちとまとめよなどと考えながら集め、洗面所のゴミ袋を集め、寝室のゴミ袋を集め、ついでにベッド周りに落ちているティッシュのゴミを拾い、大きなゴミ袋に束ねて・・・
それからAmazonの段ボール箱を全部潰して運びやすくまとめて、ペットボトルは袋に入れて、夫がゴミ捨て場に運びやすいように玄関に整列。
ここまでが大変なので、この作業も全部やってくれたらラクなのに、とは内心思っていた。
こういうことは言えば良いのかもしれないですが、せっかくゴミ移動をやってくれているので、気分よくやってほしいと思うから、わざわざ言わない。
だからこそ、この本をそっと置いておいて、読んでもらうだけで、こちらの気持ちを代弁してもらえるのはありがたい。

それから、夫の方も完璧イクメンなどではなく、ダメっぷりがちゃんと書かれているところもこの本の良い所。
夜中のオムツ替え担当なのに、余りの眠さに負けて、 気づかないフリをしてスルーしようとする夫。 
家事を手伝いに来てくれた妻の母親に感謝の言葉も伝えず、「えー明日来れないんですか?」などと言って母親を怒らせ、サポートを打ち切られる夫。
夫が読んでいて、自分が責められるばかりの本はあまり嬉しくないですが、「こんな気持になるのってオレだけじゃないのね」と共感できるところが多いのは読みやすいだろう。

結局のところ、夫婦が自分の思っていることを相手にうまく伝え、相手の気持ちを理解して、お互いに「ありがとう」と「ごめんね」を言い合うことが出来れば、産後クライシスなんて起こりえないと思うが、この「うまく伝える」というのが難しい。 
この本を二人で読むことで、言いづらいこと、表現しにくいことも相手に伝わる、という意味でコミュニケーションの道具としてオススメである。