Fotolia_66327132_XS
Photo credit: Fotolia

まだ子供が生まれたわけではないので想像の域でしかないが、育児書や子育てに関する本を読んでいると、子供が可愛すぎて、子供と過ごす時間が楽しく、仕事に行くたびに後ろ髪を引かれる人がいるのはわかる。
加えて、育児と仕事を両立する生活が大変な中、仕事を続けていくには、それなりの理由と覚悟が必要だろう。
経済的な理由はその一つだが、それ以外の理由を確立している人たちの話を、何回かに分けて書いていきたい。

今回、私は産休に入る前に、会社の上役の人々に、産休前に色々相談したいから、と言って一人30分くらいの面談を申し込んだ。これはどこかで書こうと思うが、産休前にやるべきこととして、普段仕事を一緒にしない人も含め、部署に関わらず上役の人々に面談を申し込むことをお勧めしたいと思っている。仕事の枠を超えてその人の人柄を知るのは楽しいし、休みがあけてから一緒に働きたいと思うロールモデルを探すのにも役に立つ。

さて、その中のひとりが、面白い話をしてくれたので、今日はそれをシェアしたい。

彼の家は共働きで、小学生の娘と息子がいるという。奥様もかなり責任のある仕事をしているようである。
ちょうど娘が保育園だったころは、土日は娘と一日中遊んでいたそうだ。娘と一緒に時間を過ごしていると、自分も本当に楽しい。娘もそれを感じたのか、ある日曜日の晩、こんな会話になった。

娘「お父さんは、私と遊ぶの、楽しい?」
父「楽しいよ」
娘 「じゃあ明日は、かいしゃに行かないで、私といっしょに遊ぼうよ。私もほいくえん行かないよ。」

困ったお父さんは次のように答えた。

父「でも、XXちゃんは保育園でお友達と遊ぶのが楽しいんでしょう?」
娘「うん、でもお父さんと遊ぶのも楽しいよ」
父「XXちゃんとかXXちゃんとか、お友達も待ってるんでしょう?」
娘「うん・・」
父「じゃあ保育園に行かなくちゃ。お父さんもね、 会社にたくさんお友達がいて、お友達がみんなお父さんのことを待ってるんだよ。だから、明日からは会社に行かなくちゃいけないんだ」
娘「かいしゃでお友達と遊んでるの?」
父「そうだよ」
娘「私と遊ぶのより楽しいの?おもしろいおもちゃがあるの?」
父「XXちゃんと遊ぶのも楽しいんだけど、会社でお友達と遊ぶのも楽しいんだよ。おもちゃもおかしもたくさんあるよ」
娘「ふーん」

娘は納得が行かないような様子で、会話が終わった。彼は考えた。

奥さんはフルタイムで働いて、稼ぎも良い。正直自分が仕事を辞めても、辞めないまでも、もっと娘と時間を過ごせる仕事を探しても、経済的には問題がなさそうだった。更には、奥さんは今の仕事にやりがいを感じており、楽しそうだ。自分がもう少しライフスタイルの良い、楽な仕事に移ったら、喜ぶだろう。
それでも、大好きな娘に求められてでも、いま自分が身を粉にして夜遅くまで働いているのは何故だろう、と考えた。結論が出ない。

その後、娘が「お父さんが楽しいといっているかいしゃというところで私も遊びたい」と言い出し、ある日曜日に会社に娘を連れて行くことになった。

誰もいないオフィス。「今日は日曜日だから、お友達はいないんだよ」と説明する。
娘はその辺を走り回り、オフィスの中で無料で提供されているお菓子やジュースを見つけて喜び、ひと通りはしゃいだ後、こう聞いた。

娘「おもちゃはどこ?」 
父「これがお父さんのおもちゃだよ」 と言いながらパソコンや書類の束を指さす。
娘「ふーん。楽しいの?」
父「楽しいよ」
娘「私といっしょにXXのおもちゃで遊ぶより楽しいの?だから毎日行くの?」

彼は「そうだよ」と答えながら、本当に自分は今楽しいのだろか、と自問した。
中途入社したばかりの頃、新しい価値のある仕事、知的刺激の大きな同僚たちと一緒に働いて、ワクワクしていた気持ちの頃を思い出した。ある程度働くことに慣れてきてからは、出世のことも考え、必ずしも自分がワクワクしない仕事も引き受けていた。
今、自分は本当に娘との時間を犠牲にしてでも、情熱を傾けられることだけをやっているだろうか。
娘に嘘は付けない、と思った。

それ以降、彼は、自分が本当に情熱を傾けられる仕事だけをやろう、と決意した。
自分がワクワクしないプロジェクトはそのままでは引き受けない。ワクワクするような内容に変えていく。そうでなければ、クライアントにも失礼だ。
それから、つまらない作業はできるだけやらないように、自分の働き方をもっと効率的に変えていこう。
娘にワクワクする気持ちを伝えられる仕事をしていれば、若い後輩たちにも、クライアントにも、そのワクワクが伝わり、いい影響を与えられるはずだ。自分たちの使命は、後輩たちやクライアントをワクワクさせて、彼らの動く仕組みや考え方を大きく変え、変革していくことなのだから。

彼とはその後、復帰後の話をし、30分が終わって、私は部屋を出た。
育児はきっと楽しいだろう。
だからこそ、仕事では自分が本当に好きなことや、情熱を傾けられることをやっていこう。そして、情熱が傾けられるように、働き方も変えていこう、と 思った。この気持ちを忘れないようにしたい。